約 1,837,678 件
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/17.html
――Opening―― うっすらと目を開けて真っ先に考えたのは、どうして自分はこの冷たい床の上で横になっているのかという事だった。 まだはっきりとしない意識のまま、少年――キラ・ヤマトはゆっくりと体を起こした。 そのまま周囲を見回す。そして目に入ってきた光景に、キラはまだ夢の続きを見ているのかと思った。 見知ったアークエンジェルの艦内、ではない。そこは見覚えの無い、広いドーム状の空間だった。 照明器具の類は何一つ無いにも関わらず、ドームの天蓋全体がうっすらと発光しているおかげで 場内はかろうじて人の顔を判別できる程度には明るい。 どうやらこの部屋には他にも大勢人がいるらしく、ざわめきが部屋全体に反響している。 頭にも徐々に血が巡ってきた。しかし、依然として状況が飲み込めない。 記憶を辿ろうにも、ここに来る直前だけが何故かはっきりしない。 「どこなんだ……ここは」 「さあ……わたくしにも、その問いに答えることは出来かねますわ」 何気なく発した独り言に返事が返ってきたことに驚いて、キラは振り返った。 そこにいたのはキラも良く知る少女――プラントの歌姫、ラクス・クライン。 「ここは……君はどうしてここに?」 「分かりません。わたくしも、気がついたらここに……ただ、どうやら他の方々も、同じのようですわね」 ラクスの視線を思わず目で追う。 いつの間にか薄明かりに目が慣れて、さっきよりもはっきりと場の状態が把握できた。 不安げな表情の少女達が、互いに寄り添い合っているのが見える。 赤いアフロヘアーの少年が、苛立った口調で何か叫んでいるのが見える。 奇妙な仮面を着けた男が、腕を組み歩き回りながら物思いに耽っているのが見える。 確かに、望んでこの場所にいる人間はいないようだった。 キラの背中を冷や汗が流れ落ちる。 嫌な予感がする。何か、とてつもなく良くない事が起こるような。 ――その予感は、それから程無くして最悪の形で的中することとなる。 『目覚めよ……人間達』 その声が『自分の頭の中から』聞こえてきた時、キラはこの異様な状況についに自分の精神が異常をきたしたのかと思った。 しかしどうやらそうではないらしく、ラクスも、場内の他の人間達も一様に同じ声を聞いたようだった。 ざわめきが場の空気を介して伝播する。 状況を確認しようとキラが口を開きかけた矢先、声が再び脳内に響いた。 『我が名は……アインスト……ノイ=レジセイア……』 混乱する頭を無理に急き立て、キラは何とか今の状況を把握しようと必死になった。 今、声は確かに自分の名を名乗った。という事は、この声の主はどこからか自分達の脳内に語りかけているというのか。 昔読んだ空想小説に出てきた単語が思い出された――テレパシー? いや、そんな非科学的な…… しかし次の一言で、キラの思考は今度こそ完全に停止することとなる。 『……これからお前達には……最後の一人になるまで、殺し合いを、してもらう』 場内を完全な沈黙が支配する。 しかしそれも一瞬の事で、戸惑いは細波のように部屋中に広がっていった。 戸惑いは徐々に増大し、やがて決壊する。 「ちょっと、誰だか知らないけど、いきなり人をこんな所に連れてきて、なに勝手な事言ってるのさ!」 赤髪の小柄な少女が、何処にいるのかも知れぬ声の主に向かって叫んだ。 慌てて、傍らの金髪の少女が腕に取り縋って制止しようとする。 「テ、テニアちゃん、落ち着いて!」 「落ち着けるもんかっ! ……ねぇ、聞こえてるんでしょ!? だったらさっさとあたし達を元の所に返してよっ!」 少女の決死の叫びに勇気付けられたのか、場内のあちこちから野次と怒号が飛び交い始める。 まるで自分の中の不安を、無理に動的なものに変えて吐き出しているように。 やがて、新たな声が脳内を震わせた――僅かな苛立ちを含んだようにも聞こえる声が。 『……愚かな……』 瞬間、ドームの床が、壁が、天井が、ぐにゃりと歪んで掻き消えた。 そして代わりにそこに出現したもの――その異様さに、誰もが戦慄する。 異形。それ以外に、その存在を形容する言葉が見つからない。 禍々しく伸びる角、おぞましく蠢く触手、生物とも無機物とも取れない怪物的なフォルム、原色を切り貼りしたような体色…… そして、暴力的なまでの大きさ。 あらゆる進化の可能性を内包した存在が、そこにいた。 会場内の誰もが、この異形の存在こそがその声の主である事を悟る。 再び響く声。 『人間共が……我に抗う事など……永劫叶わぬと知れ』 そして世界はまた逆回りに歪み、たちまち元のドームへと戻る。 先ほどの異形の存在が出現した痕跡など、何一つ残ってはいない。 何が起こった? パニックになりかけた意識で、キラは思考する。 (…………幻、覚…………!?) それを否定するにはあまりに現実から乖離しすぎていて、それを肯定するにはあまりにリアルすぎる光景。 このテレパシーと同じようにイメージを伝えてきたというのだろうか、それとも……? あの衝撃の後では、どんな理性的な思考ももはや空しい。 赤髪の少女もやはり無理をして虚勢を張っていたらしく、金髪の少女に抱きかかえられていた。 会場は水を打ったように沈黙を取り戻していた。 「ここからは私が…………アルフィミィ、と申しますの。皆様、お初にお目にかかりますの」 ドームの天蓋の頂点から、まるでスポットライトのように光が降りる。 その中心に、蒼い髪の少女が立っていた。 年恰好は十代前半といった所であろうか、どこか人間離れした神秘性を感じさせる。 どうやら場の主導権はあの声の主からこの少女へと移ったらしく、アルフィミィと名乗った彼女はゆっくりと話し始めた。 「まず……先ほどの通り、皆様には殺し合いをしていただきますの」 殺し合い。その言葉が聞こえた瞬間、場の空気が僅かに張り詰めた。 キラの隣で、ラクスが無意識に身構えるのを感じた。 「皆様一人ひとりには、それぞれ機動兵器が一機と食糧や地図などの最低限の荷物が支給されますの。 各自それを受け取り次第、ここから『箱庭』へと転送いたしますの」 アルフィミィは淡々と説明を続ける。 「そこで最後の一人になるまで、殺しあっていただきますの。最後に残った優勝者は元の世界に戻してあげますの。 それだけではありませんの、優勝した方には素敵なご褒美が――」 「……アルフィミィ嬢。少し、よろしいか」 説明を中断する声の主に、アルフィミィだけでなく会場全体の視線が集まった。 全身黒尽くめのスーツを身に纏った男だった。毅然とした態度で数歩前に歩み出る。 「あなたは……思い出しましたの。お噂はかねがね、ですの……Mr.ネゴシエイター」 「そのような社交辞令を聞くとは思わなかったが……まあいい。 アルフィミィ嬢、三つほど質問がある。答えていただけるだろうか」 「熱心な方がいてくれて嬉しいですの。答えられる範囲でお答えいたしますの」 「それは結構」 ネゴシエイターと呼ばれた男は軽く咳払いをして、それから口を開いた。 「まず第一。そもそもこの殺人ゲームには何の意味があるのか。第二に、なぜ我々が選ばれたのか。そして第三に――」 彼はそこで一旦言葉を区切り、 「我々の何処にこの馬鹿げたおふざけに付き合ってやる道理があるのか、だ」 一気に言い切った。 会場中を、ざわめきが駆け抜ける。 (なんて人なんだろ……) 黒スーツの男の後ろ姿を見ながら、キラは内心で驚嘆した。誰もが聞きたくとも聞けずにいた事を、彼はあっさりと…… アルフィミィは僅かに思案しているようだったが、すぐに男の方へ向き直った。 「分かりましたの。順番にお答えいたしますの」 会場内の誰もが、彼女の言葉に耳を傾ける。 「まず一つ目は……秘密ですの。言えませんの」 「……何?」 「それから二つ目……これも言えませんの。言う必要もありませんの」 「……アルフィミィ嬢、貴女の対応には残念ながら誠意が欠けていると言わざるを得ない。 それとも、そのような説明で我々が納得するとでも?」 「納得していただく必要はありませんの……私達の言うとおりにしてくれればそれでいいですの」 「…………」 黒服の男の表情が僅かに歪む。しかし彼が次の言葉を発する前に、アルフィミィは第三の答えを口にしていた。 「三つ目の答えは、あなたの首元にありますの」 訝しげに自分の首に手をあてた男の顔が、瞬時に強張った。その反応に不審なものを感じたキラも、思わず自分の首に―― そして驚愕した。自分の首に、冷たく硬い感触を持つ何かが装着されている。 咄嗟にラクスの方を振り返る。ラクスも同じ事を考えていたらしく、こちらを見る表情に戸惑いの色が浮かんでいる。 そして彼女の細い首に、鈍い金属光沢を放つ首輪が嵌っていた。 ラクスの反応を見るに、どうやらキラ自身の首に嵌っているのも同じものらしい。 どうやら他の参加者達も同様の事実に気付いたらしく、戸惑いの声が同時多発的に起こった。 首輪に手をかけ、何とか外そうと試みる人までいる。 アルフィミィは満足そうに頷き、再度ルール説明を開始しようとした。 しかしそれはまたしても遮られる事となった――今度は、女性の声によって。 「お嬢ちゃん……」 金髪をポニーテールに結んだ女性が、アルフィミィに呼びかける。 女性は、アルフィミィのことをまるで昔から知っているかのような、形容し難い表情を浮かべていた。 「……何か用ですの?」 「……最初にあなたがこの部屋に入ってきた時から、何となく嫌な予感はしてたのよ。 ねぇお嬢ちゃん……これはいったいどういう事? あなたにはもうあの連中のいいなりになる理由なんてないはずだわ。 それに何より、このゲームっていうのは――」 「……私は貴女を知りませんの。ですから、何の事だか分かりませんの」 「え……お嬢ちゃん?」 予想外の返答に、エクセレンと呼ばれた女性は狼狽を見せた。 代わりに彼女の恋人と思しき男性が、エクセレンの後を引き継ぐ。 「何かあるのかもしれないと思ってさっきから黙って聞いていたが……分からないな、どういう事だ? お前は――」 「知らないと言っていますの。用が無いなら話しかけないでほしいですの」 「アルフィミィ!」 「お嬢ちゃん!?」 「……もういいですの。貴女には、これからの説明の『実験台』になってもらいますの」 明らかに動揺を隠せない二人に残酷な言葉を投げつけ、アルフィミィは他の参加者の方へ向き直る。 「皆様! このゲームには、三つの禁止事項がありますの! 一つ目は、一日二回の放送で発表される『禁止エリア』に侵入すること! 二つ目は、この首輪を力づくで外そうとしたり、強い衝撃を与えたりすること! 三つ目は、最後の死者が出てから24時間以内に誰も死亡者がでないこと! そしてこれらに違反した時はペナルティが与えられますの――それは、」 そこで言葉を区切り、アルフィミィはエクセレンの方へ身体全体を向ける。 アルフィミィの言動を目の当たりにして、エクセレンの顔に悲しみと寂しさと憂いとが同居した悲痛な色が浮かぶ。 「お嬢ちゃん……まさか、本当に私たちのこと……?」 「…………さよなら、ですの」 そして、少女は両手を小さく一度、叩いた。 炸裂音。 エクセレンの身体は二、三度大きく痙攣し、そのまま重力に任せて冷たい床に倒れ伏した。 一瞬遅れて雨のように降り注ぐ、血と肉の混合物。動かない彼女の周囲に、赤い水溜りが広がっていく。 彼女はもう何の表情も浮かべてはいなかった――いや、もはや表情そのものが存在しなかった。 なぜなら彼女のその端整な美貌は、突如爆発した首輪によって飛び散ってしまったのだから。 「…………エクセ、レン…………?」 すでに物言わぬ彼女の名を呼びながら、彼女の恋人がよろめきながら歩み寄っていく。 一歩、二歩、そこで床に広がる赤を見て、彼は茫然自失の顔つきのままその場にくずおれて膝を突いた。 無言で肩を震わせる彼を僅かに一瞥してから、アルフィミィは仮面のような表情のまま淡々と説明を続ける。 「皆様の首輪には、人一人殺すのに十分な威力の爆弾が仕込んでありますの……言う事を聞いてくれない悪い子は、お仕置き、ですの」 悲鳴を上げる者さえ、いなかった。 不自然とでも形容すべき静寂が、部屋中を満たしていた。 たった今誰もが目にした、あまりにあっけなくてあまりに現実離れした、死。 もはや、誰一人として疑う者はいなかった。 この首輪をつけている限り、自分達の生殺与奪の全ては赤の他人の手のひらに握られているということ。 そして、自分達はもはや殺人ゲームのコマの一つに過ぎず、主催者の言うとおりに殺し合う以外に道は残されていないことを。 【エクセレン=ブロウニング:死亡】 【残り53人】 【プログラム開始】 NEXT 投下順 恋と呪い 時系列順 悩める少年 登場キャラ NEXT ノイ・レジセイア 古よりの監査者 アルフィミィ 第一回放送 キラ 人とコンピューター ラクス 歌と現実 キョウスケ 貫く、意地 エクセレン ロジャー The two negotiators テニア 憎悪 メルア 憎悪 コスモ 金髪お嬢とテロリスト ユーゼス 仮面の舞踏会
https://w.atwiki.jp/k2727324602/pages/1040.html
2012/3/18開催の「鋼の魂祭」における特典ブックレット「スーパーロボット大戦シリーズ生誕20周年記念特製ブックレット」の内容を抜粋してご紹介。 本書最大の目玉は「『スパロボを作った男達』」と題する、寺P×じっぱひとからげ氏(←なかなか表に出て来ることのない大ベテラン)の対談。 他、開発スタッフ総勢75名を対象としたかなり大規模なアンケート結果もなかなか見ごたえがあります。ということで、この2点を中心に記載しております。 <リンク> 2012・春 鋼の魂祭備忘録 雑感集 <その1>寺P×じっぱ氏 対談メモ(収録日2012.2.3) ※全3ページと少量ですので、丸写しにならないよう注意しつつ…。 「スーパーロボット大戦」の誕生「スーパーロボット大戦」というタイトルについては、(20年前当時の20代にとって)懐かしい感じを出したくて考えたもの。ちなみにこのネーミングセンスでもって、第2次の時には「帰ってきたスーパーロボット大戦」、Fでは「さらばスーパーロボット大戦」というタイトル案を考えていたらしい。 スパロボのゲームジャンルについては、元々ダンジョンタイプのRPGを考えていた(ちなみに、精神コマンドはまさしく「RPGでいう魔法の役割」として考案)。制作会社との協議の中でシミュレーションRPGに路線変更。これに加えて(先行して企画がスタートしていた「バトル大相撲」等のコンパチ作品で採用されている)巨大ロボットと人間大ヒーローの共演に違和感を感じていたじっぱ氏が、「アニメのロボット」というジャンルで括ることを考案、かくてスパロボ誕生。しかし当時はバンプレストのゲームの中でも異色な存在であり、20年続くなんて思っていなかった。 「初代」と「2代目」の出会いじっぱひとからげ氏と言えば正体がよく分からないことで有名。寺Pも入社当初、じっぱ氏が名乗らなかったせいで、誰がじっぱ氏だかしばらく分からなかった(最近の話かは不明だが、寺Pも「じっぱひとからげさんは今、何やってるんですか?」と聞かれたことがあるとのこと)。この点を逆手に取って、「じっぱひとからげ」を襲名制度にしてみようという案もあったとか。 寺Pから見たじっぱ氏の第一印象「とにかくやる気のなさそうな人」。そしてそれは大筋で正しかった。/エピソード1:新人として教えを請う寺P「(寺P)どうやって作ったらいいんですか」「(じっぱ氏)好きにすれば。資料はその辺にあるから、見といて」/エピソード2:寺Pを2代目Pとするかどうかについての上司との会話「(上司)寺田にやらせようと思うんだけどどうだ?できると思うか?」「(じっぱ氏)できるんじゃないスか~」/寺Pフォロー「(寺P)あっ、実際にはすごくいい人なんですけどね」「(じっぱ氏)そんなフォローいらないよ(笑)」 (オマケ)森住氏のエピソード。すごく分厚い手書きの企画書を送ってきた。→じっぱ氏、その分量を見て、内容もよく見ないうちに「その熱意は買おう」→バンプレ人事部「じっぱが気に行った学生がいるらしい」→採用決定。 二人三脚で作り上げた「スパロボ」二人の正反対なところ。寺Pは散らかす人で、じっぱ氏は片づける人。じっぱ氏、もうお前の尻は拭けんと、「HPと装甲はもう改造しなくていい。運動性を上げて、危機を回避するようになれ」と寺Pにアドバイス。/その2。寺Pは広告塔として外に出る人、じっぱ氏は裏方で頑張ろうと決意。/じっぱ氏の「スパロボを作った男達物語」陰謀……「まだ学生だった寺Pの素晴らしい企画書によってスパロボが誕生した」という偽りのカリスマ物語を浸透させ、制作現場から逃げようと画策→寺Pの説得により失敗、開発現場に戻って結局現在に至る。 二人の似たところ。二人とも、元々はバンダイでプラモデルの仕事をしたかった→「ゲームに興味があるなら、バンプレストを受けてみれば」と紹介され、採用されている。 初期の頃の逸話。①資料がなくてとても苦労した。地方に住む友人から原作を録画したビデオテープを借りたりとか……今は大概DVDボックスが出ているのでとても便利。/②インターネットがなかった当時は、手紙がたくさん来ていた。中には100ページ以上の企画書などという超大作も! 文化を作りなさい、と言われて「スパロボを20年続けろ」との発言は、かの有名なバンプレ初代社長・杉浦幸昌氏。「20年続ければ文化になる。親子で楽しめるようになる。そういう大きな流れを作るために、20年続けなさい」との言葉を受けて、「そこから『継続は力なり』という言葉を念頭に置くようになりました(寺P)」 20年続けるために、サービスを欠かさないようにしてきた寺P。「(寺P)『次はどんなロボットが出て来るんだろう』と思ってもらったり、楽しみにしてもらえなきゃ、次は続かないですからね」→で、スパロボで原作の映像や玩具などに興味を持ってもらえればいいなと思っている、ロボットアニメへの恩返しになったらいい、とのこと。 (オマケ)「(寺P)そういえば、じっぱさんはスパロボにまだ出ていない、とあるロボットが好きですけど、企画会議でそれを参戦させようと言い出さないですよね。」 これから目指すもの、これまで目指してきたことお二方の考えるスパロボのテーマ「(じっぱ氏)ロボットアニメのカッコよさ、そのイメージを大事にしたい」「(寺P)ロボットアニメという文化を、スパロボというゲームでも後世に伝えたい」。また、お二方共通の方向性としては、幅の広い作品でありたい、ロボットという共通点でいろいろな世代が盛り上がってくれるものを作り出していきたい、という、前節の「ロボットアニメ文化」方針を踏襲したもの。 (オマケ)「(寺P)あと、いろいろと大変ですけど、グローバル展開も。もちろん、コアな層を狙いつつ、こだわってスパロボを作っていきたい」 <ワタクシの感想>/太字箇所を中心に…じっぱ氏・寺田氏共通ですが、杉浦氏の「20年続けば文化」の信念がしっかりとベースにあって、それで数々の苦難を乗り越えて今日を迎えることが出来たのだな、ということがひしひしと伝わる内容でした。/今回の鋼の魂祭でも(ぱらぱらとですが)親子連れを見かけました。潜在的にはもっともっとたくさん、そういう人達がいると思います。20年続けば親子で楽しめる文化になる……その壮大なビジョンはまさに具現化しつつありますぞお二方!!(……というか、私も子供を作ってそういう人達の仲間入りをしてなきゃならん歳になりつつあるわけですが……) 「じっぱさんが好きだけど、企画会議では名前を出さない某ロボットアニメ」……気になりますね、一体なんでしょう。同世代の寺Pが常々熱中した作品として挙げていて、COMPACT3で参戦を果たした「合身戦隊メカンダーロボ」、これが1977年の作品ですから、その近辺の作品でしょうか。まるっきりの当て推量ですが、有名どころだとすれば「マグネロボ ガ・キーン」「惑星ロボ ダンガードA」「闘士ゴーディアン」あたりでしょうかね? 寺P発言に出て来た「グローバル展開」。これは以前にGBA版のOGを海外展開したことを踏まえた発言か、それとも……?/ちなみに親会社のバンナムでは、海外事業テコ入れのため、「パワーレンジャー サムライ(侍戦隊シンケンジャーの海外名)」に次ぐ、第2の海外向けキラーコンテンツを手にしようと気張っている最中。そういった背景を考えると、ひょっとしてということもないではない……? <その2>スパロボスタッフが乗ってみたいロボットランキング ※「開発チームスタッフ一問一答」における「⑥一度乗ってみたいメカ(最大3機)」での回答結果を集計してみました。 ※得票数同数の場合は五十音順で表示。厳密に同じでない機体は全部別個の存在として集計しています(例:アルトアイゼンとアルトアイゼン・リーゼ、VF-25とVF-25Sはそれぞれ別。ただし「RX-78ガンダム」「ガンダム」は同じ機体としてカウント) ◆7票サイバスター ◆6票スコープドッグ ◆5票ボスボロット ◆4票アウセンザイター アルトアイゼン ガオガイガー ゴッドガンダム ビッグオー マジンガーZ ◆3票VF-1バルキリー Ζガンダム ウォーカー・ギャリア ガンバスター ゲシュペンスト ゼオライマー ダイゼンガー ボン太くん (以下、少数派意見)(2票)RX-78ガンダム アルトアイゼン・リーゼ エルガイム ガイキング ガンレオン キングゲイナー コン・バトラーV ダイモス ダンクーガ ホバーパイルダー レイズナー (1票)∀ガンダム VF-1A(一般機) VF-1Sストライクバルキリー VF-1スーパーバルキリー VF-25 VF-25S YF-19 ΖΖガンダム νガンダム 暁 アクエリオン アストラナガン アプサラスⅢ アフロダイA ヴァル・ヴァロ ウイングガンダムゼロ エルガイムMk-Ⅱ オーガス ガーベラ・テトラ ガーランド ガーリオン・カスタム(トロイエ隊) ガオファイガー ガチコ ガルガード ガンダムF91 ガンダムMk-Ⅲ ガンダムアストレイレッドフレーム ガンダムエピオン ガンダム試作3号機 ガンバルガー ガンブラスター 魚竜ネッサー グランヴェール グルンガスト グレートマジンガー グレンラガン 黒獅子 ゲシュペンストMk-Ⅱ タイプS ゲッター1 ゲッタードラゴン ゲッターロボG ゲドラフ ケンプファー ゴーダンナーツインドライブモード ゴーナグール 虎龍王 コンパチブルカイザー ザクⅠ ジェガン ジェネシック・ガオガイガー シズラー黒 シャイニングガンダム ジャオーム ジャスティスガンダム シャトル 獣神ライガー シュロウガ 真ゲッター1 ソウルゲイン 第13使徒バルディエル ダギ・イルス(黄) ダン・オブ・サーズデイ ダンガイオー ダンバイン(トカマク機) デスティニーガンダム トールギス トッド用ダンバイン ドミネーター ニルヴァーシュspec2 ネェル・アーガマ ノイエ・ジール ハイペリオン バスターマシン3号 バルキリー ビアレス 百式 ビューナスA ヒリュウ改 ビルトシュバイン ビルトビルガー ビルトラプター ファイヤーバルキリー ブラックサレナ ブレンパワード ベミドバン ボルトガンダム ライジンオー ライディーン ラゼンガン ラフトクランズ ランドリオン リーオー ヱクセリヲン
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/318.html
すべて、撃ち貫くのみ ◆VvWRRU0SzU 「あれは……キョウスケ中尉か。あの人は、今さら……!」 カミーユの見上げた空を、紅き隼が駆け抜ける。 ただ見上げるだけの自分をあざ笑うかのように、その軌跡はぶれることはない。 向かう先は異形の機体。 閃く砲火に我に返る。そうだ、呆けている場合じゃない。ベガを殺したあの男を……! 半壊した基地を走りだす。格納庫はさほど離れていない。 ユーゼスも、キョウスケも、クワトロのことも。すべては頭から抜け落ちる。あのふざけた理由で悪意をばら撒く男を、倒す。 「許さない……絶対に、許すものかッ! お前は、生きてちゃいけないんだ!」 やがて、半壊した格納庫へと辿り着く。粉塵で汚れこそすれ、VF-22Sは健在だった。 小型ということもあり、横のローズセラヴィーの影に隠れていたことが幸いしたのだろう。 その、ベガの乗機は―――右半身が丸々溶け消えていた。まるで、主の後を追うように…… また、怒りがこみ上げる。その熱を抑えないまま、カミーユはバルキリーへと乗り込む。 空でキョウスケが戦っている。だが、援護に行くのではない――― 「俺が、お前を討つ! バーナード・ワイズマンッ!」 咆哮とともに、蒼穹に向けて飛び立った。 □ 「バーナード・ワイズマン……敵の名前など、知るべきではないな」 ファルケンは目視で敵機を確認できる距離に入った。 先程の黒い機体ではないが、こちらもやはり特機。つくづく相性の悪いパイロットだと独りごちる。 眼下の基地はもはや廃墟と言う方が正しい有様だ。管制塔や倉庫など僅か残った施設がかろうじてここが先刻まで基地であったことを連想させる。 カミーユとベガ、そしてユーゼスがどうなったかはわからないが、今は敵機の制圧が最優先だ。 「その機体……またあんたか!」 「今度は見逃がさん。ここで貴様がしたことのツケを払ってもらう……!」 相変わらず全周波数帯に向けて発信される声に、だが呟きで返す。 ここに来てキョウスケに語ることはない。あるのはただ、この状況を招いたこの男、ユーゼス、そして己への怒り。 ミサイルの弾幕を張りつつフルスロットルで接近する。 敵機には見た限り銃器に類する武装はないが、特機を見た目で判断するのは愚策だ。 パターンTBS・シングルモード起動。動く前に仕留めると、一気に距離を詰める。 「く、来るなッ! 何か、何か武器は……!?」 狼狽に満ちた声が聞こえるが、容赦するつもりはない。 唯一の接近戦用の武装たるブーストハンマーは先の交戦で失った。オクスタン・ライフル、「槍」の名を冠するライフルを掲げる。 モードB、自分に合っている実弾での射撃を選択。 サイズの差は二倍以上だが、接近すれば狙いが甘くとも関係ない、とばかりに乱射する。 「うああああああああッ!」 だが完全な素人でもないらしい新兵は、腕を掲げて防いだ。と同時に敵機が発光、その腕にある爪が展開、赤熱した。 膨大なエネルギーを纏った爪は、ファルケンの装甲など容易く引き裂くだろう。 ファルケンは接近戦は不得手だというのに……つくづく分が悪い、と苦笑する。 テスラ・ドライブの出力を上げ、再度加速する。 倍以上の全長だ、接近しての小回りはこちらに分がある。唯一勝っている機動力で掻き回すしかない。 敵機が再度光を放つ。今度は全身の突起に熱が集まり、本体からパージ……射出された。 飛び来る6つの鋭刃。ファルケンは後退しつつスプリットミサイルを放ち迎撃する。 「チッ、あのサイズでは一発でも受ければ命取りか。どうする……!?」 ミサイルで撃墜しきれない刃は回避あるいは力場を纏わせた翼で斬り払った。詰めた距離は開き、敵機からは再び刃状のパーツが確認できた。 破壊できず回収された刃はともかく、どうやら自己再生機能まで備えているようだ。 これがアルトあるいはアルトの後継機なら刃の中に強引に突っ込むことも可能だが、射撃兵装がメインのファルケン、そして自分の技量では攻撃を避けつつ前進するのは難しい。 オクスタン・ライフルで敵機の装甲を抜くためにはやはり接近し、近距離から撃たねばならない。キョウスケの技量では遠距離からの狙撃はおそらく躱される。 だが敵機はキョウスケが接近しようとすると機体性能にまかせて強引に距離を開ける。 さすがに二度目の交戦だ、こちらの手の内は知られているらしい。射撃は不得手、接近されなければ致命打はない、と。 何度か接近を試みるも、さすがに易々と懐に飛び込むことはできなかった。 どうする、と手をあぐねている内、レーダーが新たな反応を捕らえる。眼下の基地からの反応だ。 見る間にその反応は接近してきた。どうやら戦闘機、向かう先は交戦中の特機だ。 二機を同時に視界に収めるべく移動しようとするも、その戦闘機は凄まじいスピードで突っ込んできた。 それはキョウスケの知っている機体だ。カミーユが乗っていたはずの可変戦闘機。 傍らを駆け抜けた戦闘機、特機はやはり敵と認識したか再び、刃……ブーメランを放った。 舞い踊るブーメランの中に、しかし戦闘機は減速せず飛び込んだ。 キョウスケなら後退を選ぶ場面、戦闘機はまるで軌道を読んでいたかのようにロールし、刃をすり抜けていく。 前面から迫る刃は機銃で迎撃し、囲まれれば脚部―――ガウォーク形態といったか―――を振り回し強引に軌道を変える。 瞬きをする間に戦闘機、いやバルキリーは敵機を至近距離に捕らえた。 人型へと変形し、ガンポッド、ミサイルを一斉発射するバルキリー。決まったか、とキョウスケが思った瞬間。 「イグニション! うわあああああああッ!」 特機の胸部に凄まじいエネルギーが集中する。閃光は巨大な火球となり、眼前のバルキリーへと放たれる。 バルキリーの攻撃を呑み込み、誘爆させ、火球は突き進む。寸でのところでバルキリーはファイターへ変形、一気に上昇して回避した。 回避された火球は減衰する様子も見せず地平線の彼方で炸裂した。その凄まじい熱量は、どれだけの出力で放たれたか想像もできないほどだ。 しかし臆した様子など微塵も見せず再び飛び込もうとするバルキリー、その鼻先をキョウスケが抑えた。 「バルキリー、応答しろ。こちらはキョウスケ・ナンブ。誰が乗っている?」 通信を送るも、返答がない。キョウスケは再度試みる。 「応答しろ、バルキリー。カミーユが乗っているのか?」 「うるさい……うるさい! 邪魔をしないで下さいよッ!」 ようやく返ってきた少年の声は怒りに満ちていて、基地で取り返しのつかないことが起こったのだと確信させた。 「あいつはベガさんを殺したんですよ! 帰る場所があった、待っている人がいた! なのに虫ケラのように踏みにじった! 許せない……許せるものかッ!」 それきり、通信は途切れた。ファルケンを跳ね飛ばさんばかりの勢いで躱し、敵機へと踊りかかっていく。 ベガが死んだ。後悔、そして怒り。だがそれよりもまずいな、とキョウスケは焦燥する。今のカミーユは冷静さを欠いている。 持前のセンスと技量、そして機体性能のおかげでなんとか被弾していないものの、地力で勝る敵手、いつか直撃を受けるだろう。 フォローしようにもカミーユの動きは直感的すぎてこちらでも掴めず、迂闊に飛び込めば同士討ちになりかねない。 これがエクセレンなら何も言わずとも合わせられるキョウスケだが、さすがに昨日今日会ったばかりのカミーユの呼吸はわからない。 援護すら難しいか……と歯噛みしていると、通信が入る。カミーユかと思ったがそうではない。基地の管制塔からだ。 「キョウスケ・ナンブ、聞こえるか? こちらはユーゼスだ。応答を願う」 「ユーゼス……生きていたか。貴様には聞きたいことが山ほどあるぞ」 「心得ているよ、だがそれはあの機体を無力化してからにしてくれ。いつまた地上を攻撃されるかわからん」 「言われずとも……何、無力化だと?」 「時間がないので詳しくは言えんが、あの機体には高度な人工知能が搭載されている。破壊されるわけにはいかんのだよ」 モニターの中でユーゼスは首輪を指で叩く。解析に必要、と言いたいのだろう。 「簡単に言ってくれるな。破壊ですら難しいぞ」 「君が一度下した相手だろう? 同じことをもう一度やってくれと言っているのさ」 抑揚のない声ではあるが、キョウスケには暗にお前の不手際だ、と言っているように思えた。 「……俺の責任であることは認めよう。だが貴様にもその一端はある。落とし前はつけてもらうぞ」 「構わんよ。私もできる限りの協力はする。しばし時間を稼げ。直に私も出る」 通信は途切れた。信用などできるはずもないが、それでも今はやつの手が必要だ。 時間を稼ぐ。不本意だが、意志の疎通のできていないカミーユとでは敵機の撃破は困難。仕方ないと無理やりに自分を納得させた。 カミーユは相変わらずブレーキが壊れた車のようにがむしゃらに攻撃を仕掛けている。 援護するには敵機だけでなくカミーユの動きも念頭に入れて動かねばならない。 「俺がフォローする側、か。エクセレン、お前の気持ちが少しだがわかった気がするよ」 突っ込み専門だったアルト、その隙をいつもカバーしてくれたヴァイス。 やってみれば難儀なことだ、と呟いて、キョウスケはファルケンを加速させていった。 □ 「始まったか」 基地を臨む森の中でも砲火の煌めきは確認できた。派手に撃ち合っているようで、五感の鈍ったアキトにも戦の匂いは感じ取れた。 あの寡黙な男は勝つだろうか? いずれ消すべきとは考えていても、もしここで彼が敗れれば今度は自分が危うくなる。 もし発見されれば薬を飲まざるを得ないだろう。それでもこの機体では、勝てる見込みは薄いように思えたが。 「万が一のこともある……離脱する準備はしておくか」 できるだけ長距離を移動できるようにブースターを調整する。小回りは効かずとも瞬発力ならこの機体は中々のものだ。 タイミングさえ誤らなければ撤退は可能。薬をいつでも服用できるよう、一錠をビンから出して懐へ入れる。 準備が終わり、改めて戦場へ目を向ける。紅い隼は接近に手間取っているようで、大型の敵機に近づいては離れてを繰り返している。 状況は不利……撤退を第一に考え始めた時。不意に暗号通信が入った。 「アルトアイゼンのパイロット、応答しろ。位置は把握している。1分以内に応答がなければ敵と判断し砲撃を開始する」 位置を掴まれていることよりも、ピンポイントでこのアルトに通信を送られたことに狼狽した。 発信源は基地、管制塔だった。 なるほど基地の目と言えるレーダーを統制する管制塔なら隠れていたアルトを発見できたのも頷ける。 だが何故この機体固有の周波数を知っているのか。 (いや、こいつは『アルトアイゼン』と言った。キョウスケ・ナンブと同じく、この機体を知っているものか……!) 以前にこの機体に乗っていたのなら固有周波数も知っていて当然だ。そして、アルトには砲撃に対応する装備がないことも。 この距離では当たることはそうないだろうが、存在を喧伝されるのはまずい。誰がどう見ても高機動機のファルケンより鈍重そうなアルトの方が狙いやすいだろう。 まず数を減らすとばかりに狙われてはかなわない。しぶしぶ、通信に応じる。 「こちらはアルトアイゼン、……テンカワ・アキトだ」 偽名を使うかとも考えたが、機体が変わっているのだ。もし知った顔に会ったとき、ガイの名前を名乗り続けていてはむしろ不審がられる。 「テンカワ・アキト……私はユーゼス・ゴッツォという者だ。いくつか聞きたいことがあるが、構わんかな?」 「俺はキョウスケ・ナンブに連れられてきた。戦う気はない」 「ふむ、中尉にか……よろしい、敵ではないと判断しよう。では何故中尉を援護しないのかね? こちらから確認する限り、アルトに大きな損傷は見受けられないが。 ああ、先に言っておくが私は出られる機体がない。あの特機に全て破壊されたのでな、お前はどうだなどと聞いてくれるなよ」 敵ではないと言いつつも、声には微塵も友好的な成分は含まれていない。 「……問題があるのは、俺自身だ。身体に障害を持っている」 一方的に手札を晒すことに憤りを感じるが、主導権は相手にある。ここはやり過ごすしかない。 「障害……ね。その割にはその機体、戦闘を経験したかのような有様だな? 本当に戦えないのかね?」 と、声の調子が変わる。感情を感じさせない人形の声から、蛇のような陰湿な気配へと。 「それは、」 「私の考えはこうだ。君は『戦えない』のではなく『戦わない』。何故なら戦える時間あるいは機会に限りがあるから。 そしてそれは後から補えるものでなく、故に自分が直接襲われるような事態でもなければ戦闘は極力控えたい。……違うかね?」 抗弁を遮られ、続けざまに放たれた言葉はまさに今のアキトの現状そのままだった。 なんとか否定しようとするも、口を開く前にまたも先手を打たれる。 「加えて言うならその機体、アルトアイゼン。実は私に支給された機体もそれでね。どうして君が乗っているのか、答えられるか?」 「同じ機体が支給されたのだろう。あれだけ参加者がいたのなら同一の機体があってもおかしくはない」 「なるほど、おかしくはないな。だがそれを言うには機体に問題があるぞ? 一度乗った身から言わせてもらえばアルトアイゼンは決して使いやすい機体ではない。 装甲と引き換えにした機動性、実弾のみで固められ、射出型のクレイモアやステークといった癖の強い兵装。突進力こそあるものの最悪と言ってもいいほどの機体バランス。 たとえ首輪が操縦方法を示すとはいえ、そのような扱い辛い機体ばかりでは殺し合いなど促進しない。私が主催者なら二機も支給することは有り得んな」 即座に返ってきた声は確信に満ちていて。 「……そうそう、私はこの基地や市街地を探索したが放置されている機体や資材はなかった。 また補給も行ったが、補給されるのは失った弾薬とエネルギー系のみ。 損傷部位は補修されず、故にこの会場での修理は応急処置程度しか行えず欠落した部位はそのものが消滅した場合修復は不可能だ。私の機体でいえば左腕だな。 だがそのアルトアイゼンにはさしたる損傷はなく、カラーリングも異なる。 つまりその機体と私に支給された機体は別物? ……いいや違うな。その機体は間違いなく私に支給されたアルトアイゼンだ」 口を挟む暇などなかった。この男、僅かな情報から一気にこちらの核心へと迫ってくる。これ以上情報を与えるのはまずい。 「……矛盾しているぞ。修復が不可能ならば、何故この機体には左腕がある。この左腕こそが違う機体であることの証拠だろう」 「そう、証拠だ。私はその機体に乗っていた時、一度戦闘を行ってな。左腕以外にも損傷を受けた部位がある。 君の機体、まったく同じ箇所にその損傷があるな。これはどう説明するつもりかね?」 あの少女、完璧には修復しなかったのか―――焦燥が漏れ出る。 突き付けられた言葉は刃のようだった。銃火を交えないまでも、これはたしかにこの男とアキトとの戦いだ。 迂闊なことは言えない。主催者と接触したことを知られてはならない、絶対に。 損傷とやらは気になるが、ここで大きな反応を返しては相手の思うつぼだ。 「……そんなものはどうとでも言える。貴様が言っていることがハッタリで、俺から情報を引き出そうとしているということもありえるだろう」 とはいえ、有効な返し方も思いつかない、なんとか煙に巻くしかない。 まさか主催者が修復してくれた、などという突拍子もない考えには至らないだろうと願って。 だが。 「その機体の本来のパイロット、君を連れてきたキョウスケ・ナンブだ。彼はあの主催者を一度撃破しているそうだ」 「……それがどうした」 「自らを葬った男とその乗機。何らかの思い入れがあってもおかしくはないな。特にあのアルフィミィとかいう小娘、キョウスケ・ナンブとは深い関わりがあるように見えた」 「だからそれが」 急に見当違いのことを言い出した男に困惑する。言葉を続けようとしたとき、凄まじい悪寒が全身を走り抜けた。 「戦えないパイロットと使えなくなった機体。そんな者がどうやって戦闘を切り抜けた? 簡単だ、誰かの助力があった。では誰だ? 仲間、違うな。君の念は孤独なものだ。他者を拒み、孤独であろうとするものだ。なら考えられる可能性は一つ……」 一拍置いて。 「……貴様ッ! 主催者と接触し、機体を修復され、何らかの取引をした……そうだなッ!?」 語気も荒くに断言された。 ……なんだこいつは。今さらながらにアキトは恐怖を覚えた。この男は危険だ。これ以上話すべきでは――― 「……っと、失礼。少し熱くなってしまったようだ……。とは言え、今の推論、間違ってはいないと思うがどうかね?」 唐突に重苦しいプレッシャーが消える。どうといわれても答えようはない。もし答えたら―――いや、あの少女は特に秘密にしろとは言わなかった。 今も首輪を通して聞いているだろうが、特に制止される様子もない。ばれても困らないということだろうか。 どう答えたものかと思案していると。 「……まあ、答えにくいものであろうな。私も少し急ぎ過ぎたようだ、この件は後で話すとして……本題に入ろう。 私は上空で交戦中の特機を確保したい。キョウスケ・ナンブは腕は確かだが、機体性能に差がありすぎる。彼一人では困難だろう。 一人でも多くの手が欲しいのだが……協力する気はないかね?」 先程とは打って変わった内容だった。後で、がいつかはわからないが、こいつは確実に殺さねばならない。今ここを離れるわけにはいかなくなった。 「……この機体では大した援護はできん」 もはや戦えることが前提となっているが、この男相手に隠し通すのは難しいと思えた。どのみち、生き残るのがまず最優先だ。敵機の排除に異論はない。 「それについては問題ない。ここにはアルトより強力な特機が一機ある。協力してくれるなら君に譲り渡そう」 「貴様、さっきは機体はないと」 「信用できないのはお互いさまということだ。むしろ厚意と思ってもらいたいな。その機体よりは優勝が狙いやすいはずだ」 優勝、と言った。どこまで見透かされているのか…… 「……俺が優勝するつもりだと知った上で、誘っているのか」 「もちろんだとも。別に青臭い正義感で仲間になれと言っているわけではない。この場を切り抜ける最善手を打っているだけだ」 どうするか。この男はいずれ殺すにしろ、今この場にいるのは自分たちだけではない。 特機、そしてキョウスケ・ナンブが――― ―――キョウスケ・ナンブが戦っている。そうだ、今なら――― ふと思いつく。この状況下なら。そしてこの男なら。 「……条件がある」 「なんだね?」 「キョウスケ・ナンブを殺す。それだけだ」 そう、これはチャンスだ。あの腕が立ち、油断しない男も戦闘中なら、それも味方からなら。……討つのは容易い。 普通ならキョウスケの仲間というこの男に言っても承諾などするはずがない、だが――― 「……いいだろう。特機を確保後であれば、キョウスケ・ナンブの殺害を許可する」 やはり、乗ってきた。この男には仲間意識などなく、あるのは徹底した合理性だ。 「随分、軽く決めるのだな。仲間なのだろう?」 「すでに聞くべきことは聞いた。腕は惜しいが飼い慣らせない狼など傍に置いておくメリットはない」 声には一切の感傷がない。本当に、必要ないから切り捨てる、それだけだというように。 「君がどうしてキョウスケ・ナンブを殺すのか興味はあるが……まあ後でおいおい聞くとしよう。この地点に来たまえ。君の機体が置いてある」 座標が転送され、通信が途切れた。 現在位置からさほど距離はない―――薬を飲めば、だが。歩くのもやっとというこの体で油断ならないユーゼスなる男の前に出向くのは危険…… 躊躇なく、薬を噛み砕いた。身体を覆う倦怠感が掻き消える。 蒼いアルトが弾かれたように発進する。上空からでも確認できるだろうが……今のキョウスケにそんな余裕はないだろう。 もちろん、急ぐに越したことはない。目標地点が見えたところで身体を固定するハーネスを解き、いつでも降りられるようにする。 辿り着いた場所には、大型の特機があった。マントを纏う漆黒の体躯、鋭い刃を生やした腕、ピエロの仮面をつけた頭部。 たしかにアルトよりよほど強力なのは見て取れる。それにこの色、禍々しさ―――復讐者たる自分にはお似合いだ。 周辺にユーゼスはおらず、訝しりながらもアルトを降りた。 「ブラックゲッター」。操縦席に座ったとたん流れ込んできた情報はこの機体の名称を告げていた。 ゲッター線なるエネルギーで駆動し、インベーダーを駆逐するゲッターロボ、その一機。 だが首輪は同時に炉心の異常をも告げていた。動くことはできるが、炉心から直接エネルギーを供給するゲッタービームの使用は不可、と。 機体をチェックしていると、不意に通信が入った。 「どうかね、ブラックゲッターの乗り心地は? 接近戦用の特機だ、アルトに乗っていた君なら使いこなせるだろう」 「ふざけるな。この機体、炉心に異常がある。まともに動くのかすら怪しいものだ」 「何、使えないのはゲッタービームだけだ。格闘戦なら問題なくこなせる。その辺に武器も転がっているはずだ」 辺りを見回せば、そこには一振りの巨大な戦斧。アルトでは振り回せない大きさだが、この機体なら。 「一応、応急処置は済ませてある。突然機体が爆散するなどということはないから安心したまえ」 「……信用できるものか」 「それはそちらの自由だ。……さて、言っておくべきことがいくつかある。 まずあの特機は破壊せず無力化すること。まあ自己修復機能もある、破壊するつもりで攻撃して構わんがな。コックピットを直接つぶしてくれれば助かる。 次にあの戦闘機……確認できるか?」 ユーゼスの言葉で上空を見やる。たしかにそこには一機、青い戦闘機が飛んでいた。 自分に最初に支給されたYF-21によく似た機体だ。同型、あるいは後継機だろうか。 「確認した。あれは敵か?」 「いや、こちら側の人間だ。カミーユ・ビダンという少年が乗っている」 「……そうか、で?」 「それだけだ。何をしろと言うつもりはないよ」 殺しても構わない。言いたいことはそういうことだろう。 「……了解した。もういいか」 「いや、もう一つ。君は基地に保護したことにする。キョウスケ・ナンブは勘が鋭い、気付かれては面倒だ。 ブラックゲッターには私が乗っていることにしておけ。通信は私に転送されるように細工しておいた。君は敵機の制圧に専念してくれ」 その意見には賛成だ。あの男は薬を飲んだ自分が戦えるということは知らない、ならそれも利用する。 了解、と返し通信を切る。キョウスケと別れて既に一時間近く近く経過している。あの男もさすがに消耗しているだろう。 薬を飲んでおよそ2分。残り28分で敵機の制圧、キョウスケ・ナンブ、カミーユ・ビダン……そしてユーゼス・ゴッツォの殺害。 厳しいが、やれなくはない。この乱戦だ、何が起きても不思議はない―――殺意を仮面の下に押し込み、アキトは、黒いゲッターは飛び立った。 □ 「キョウスケ・ナンブ。援護する」 その声は唐突に響いた。 特機とカミーユ、その双方に注意を配り神経をすり減らしていたキョウスケは新たな反応に気づかなかった自分に毒づいた。 基地から上昇してきた機体、あれは最初に交戦した黒い特機。目前の敵手が最初に乗っていた機体。 ユーゼスは大破したと言っていたが……やはり、ブラフだったようだ。 問い詰めることが増えたなと思いつつ、その考えを頭から追い出す。今考えることではない。 ともあれ、これで三機。あの黒い特機―――ブラックゲッターと言うらしい―――の攻撃力なら、敵機に致命打を与えることも可能だろう……通常なら。 ファルケンが示すブラックゲッターのデータは依然交戦した時とは比べ物にならないほど低い数値を示している。 「ユーゼス、話は後で聞く。その機体、戦えるのか」 「格闘戦はこなせるが、残念ながら最大の打撃力であるビームは使用できん」 「チッ、当てにならんやつだ……!」 「そう言ってくれるな。今、もう一機の起動準備を並行して進めている。ローズセラヴィーだ、知っているだろう。あれの砲撃なら十二分だ」 「……ベガは死んだと聞いた。誰が動かすんだ」 「それも私だ。複雑な戦闘は不可能だが、狙った地点を砲撃するだけなら遠隔操作とあらかじめ組んでおいたプログラムで行える。 チャージまでの時間を稼げ。あとは私の支持するタイミングで一斉攻撃を仕掛ける」 「いいだろう……乗ってやる。どれくらいかかるんだ」 「月の子……エネルギーデバイスは射出は終了した。チャージまで2分というところだ」 基地の上空、交戦空域より更に上。二機の小型デバイスが上昇していくのが見える。 ある程度まで上昇したデバイスは停止し、展開した。 「この世界では雷雲などそうそう望むべくもない……そのあたりを主催者も考慮していたようだ。 月の子の周辺の空間が歪曲している。どこからかエネルギーが転送されてきているようだな」 「理屈はどうでもいい。2分だな?」 「ああ。だが時間を稼ぐだけでは足らん。確実に命中させるために足を止めろ」 「無茶を言う……しくじるなよ、ユーゼス」 「お互いにな」 2分。暴走するカミーユはともかく、自分とブラックゲッターでなんとか敵機の推進装置を破壊するしかないだろう。 「カミーユ、聞け。黒い特機にはユーゼスガ乗っている。今は撃つな。 そして2分以内に敵機の移動力を奪う。成功しようがしまいが、合図したら敵機から距離を取れ。巻き添えを食らうぞ」 返事はないと予想していたが、言っておかなければ本当に巻き込みかねない。 ブラックゲッターが突進していく。機体特性からしてファルケンは援護に徹するべきだ。 射撃は苦手と言っている場合ではない……ファルケンもライフルを放ちつつ飛び込んでいった。 □ 「また増えた!? しかもあれは……ブラックゲッター! まだ動いたのかよ!」 メディウス・ロクスの中、バーニィは必死に機体を制御していた。 もともとこの機体は複座だ。一人が操縦を、一人が機体のエネルギー管理を担当し、十全の力を発揮する。 ゼクス・マーキスのような優れた技量のパイロットやユーゼス・ゴッツォのように操縦・管制を同時にこなせる者なら一人でも支障はないが、新兵上がりであるバーニィには荷が重すぎた。 AI1とかいう人工知能もサポートしてくれてはいるが、その方面に知識のないバーニィでは有効にAI1を活用することもできない。 機体性能でなんとか紅い機体を寄せ付けずにいたら、新たに参戦してきた戦闘機は手に負えないくらい速く、そして先読みされているかと思うほどに攻撃が当たらない。 幸い火力は低いものの、時折り肉薄してはバリアを纏う拳を撃ち込んでくる。あれがまともにコックピットへ当たればさすがに死ぬだろう。 死を遠ざけようとしつつも止めてほしいと願う……矛盾だとわかってはいても止められない。 自分はどうしたいのか。この場をどのような形で切り抜けたいのか、それすらもわからない。 ただ目前に迫る死を回避しようと、それだけを想い操縦桿を握る。 やがて、火器が尽きたか戦闘機は接近戦を果敢に挑んでくるようになった。 こちらの距離だ、攻撃を―――おかしい、紅い機体の援護がない。先程までの、効果が少ないとはいえ牽制の意味はあった砲撃が止んでいる。 咄嗟にレーダーを見れば、いた。少し距離を取って、二機―――二機? そして、ブラックゲッターまで戦線に加わった。余裕の体で作戦会議でもしていたのだろうか。 自分が乗っていたときはあんな巨大な斧を持っていなかったのに、と歯噛みする。 戦闘機が、そしてブラックゲッターが凄まじいスピードで向かってくる。その後ろを固めるのは紅い機体。 四機が交錯する。 紅い機体が後方からライフルを連射するも、AI1が判断するその射線の危険度は低い。射撃は不得手という勘は当たっていたようだ。 意識をブラックゲッターと戦闘機に集中する。より危険なのはこの二機だ。 ブラックゲッターが斧を振り回す。スパイラル・ファングで受け止めるも、その隙に戦闘機が殴りかかってきた。 コックピットを守るために肩で受ける。光を纏った拳は小型機とは思えないパワーで肩の装甲を吹き飛ばした。 後退しなければ……後ろに紅い機体。回り込まれた。槍のようなライフルがゼロ距離で閃光を放つ。 背面から衝撃。弾け飛ぶメディウス・ロクス。 もうダメだ―――と諦観が頭をもたげる。降伏しよう、と誰かが囁き、受け入れられるはずがない、とまた別の誰かが否定する。 前にも後ろにも進めない……でも。 基地の惨状を目に焼き付ける。あそこには人がいたはずだ。そして、何人かは死んだはずだ――― ここで引くことはできない。何のために引き金を引いたのか。自分がここで折れれば、そのために死んだ人は何なのか。 そうだ、もう後戻りはできない。全力で戦うことしか、できることはない。 態勢を整える。ブースターに損傷、機動力が67%に低下―――まだやれる! 「イグニション……!」 エネルギー全開。 この機体の膨大な出力を全て攻撃に回す。敵機はどれも一騎当千のパイロット揃いだ、一機ずつでは埒が開かない。 すべて同時に撃墜すべく、AI1が指し示す最善の攻撃プランを実行する。 「ヘブン・アクセレレイション! 行けぇぇぇええええええええええッ!」 虚空に穴が穿たれ、そこから全てを溶かす暗い闇が溢れ出し、メディウス・ロクスを除いたあらゆるものがその中心点に向けて引き寄せられていく。 紅い機体、青い戦闘機、ブラックゲッター……接近していたその全てが射程に入った。 本来は後部座席で制御するべき兵装なのか、収束率が低い。それでも三機の動きは止まった。 引力から離脱するべく三機は全力でブースターを吹かしている。だが一向に機体は動かない。 元より一手で倒しきれるとはバーニィも思っていない。必要だったのは三機を一度に狙える状況だ。 「ライアット・ブーメラン……当たれよぉッ!」 都合6つのブーメランを解き放つ。一機につき二本、それぞれ違う軌道で射出。 どの機体も動かない―――勝ったッ! ―――そう思った瞬間、機体に衝撃が走った。 見る間にコックピットをレッドランプが埋め尽くす。何が起こったんだ……と、AI1に確認する。 【高密度指向性エネルギー体の衝突。右脚部及び右腕部消滅、出力43%に低下】 映し出されたのは無機質な文字の羅列だが、バーニィに絶望を植え付けるには十分だった。 地上、右半身が破壊されている大型の赤い機体。その機体がいま、巨大な砲身を向けていた。どうやらあれで砲撃を喰らったらしい。 まだ生き残ってる人がいたのか、と後悔と同時、安堵が込み上げる。次の瞬間それどころじゃないと思い直すも、被害は甚大だ。 見れば、敵機たちも健在だった。 ブラックゲッター、そして紅い機体にはライアット・ブーメランが多少なりとも損傷を与えたことが見て取れた。 だが戦闘機は驚いたことに全くの無傷だった。あの状況でも躱してのけたらしく、まさか噂のニュータイプか、なんて考えが頭をよぎる。 仕留めそこなったのは痛いが、敵もあれが切り札だったようだ。そのためにわざわざ接近戦を挑み、動きを止めたのだろう。 眼下の機体から感知できるエネルギーはゼロに近い。もうあの砲撃はないと判断し、ここは逃げるべきかと撤退を視野に入れる。 ……と、新たな機体が動いたということは、そこにはパイロットがいるはずだと思いつく。 どうやら人的被害は最小に留まったようだ。自分のやったことが正当化されるわけではないが、その事実はバーニィの心をいくらか慰めた。 もはや気負うこともなく、冷静に戦場を見れば……上空に何か反応がある。確認しようとした刹那、その反応が膨大なエネルギーを打ち出した。 向かう先は地上の大型機……その巨砲。 「あれでエネルギーを補給するのか……? くそっ! チャージなんてさせるものか!」 もう一機の装置へとターミナス・ブレイザーを放つ。結果を確認もせず、今度は地上へ。 生き残った人には悪いが、あの大砲だけは破壊しなければ逃げることも難しい。 ―――その瞬間、バーニィは勝つことよりも逃げることを優先し、一瞬だけ、対峙していた三機の存在を忘れた。 それはすなわち油断であり、敵対していたパイロット達が見逃すはずもない隙だった。 一秒。黒の機体が傍らを駆け抜ける。 メディウス・ロクスの左腕が宙に舞う。 二秒。紅の機体のライフルが膨大なエネルギーを解き放つ。 メディウス・ロクスの左脚部がもぎ取られる。 三秒。ようやく振り返ったバーニィが見た物は。 パイロットの怒りをそのまま形にしたかのような、蒼い炎。 スロー再生のようにコックピットへ、そこにいる自分へ向けて突き進んでくるそれを見つめ、思う。 ―――ごめんな、アル……クリス。俺はもう、帰れない――― 言葉に出したかどうか。それを確かめる間もなく、バーナード・ワイズマンはこの世界から消え去った。 →すべて、撃ち貫くのみ(2)
https://w.atwiki.jp/k2727324602/pages/306.html
(2006/6頃) 初代スーパーロボット大戦 各ステージ攻略データ6 ここでは初代スパロボの各ステージのデータを掲載します。 第11話 ギルギルガンのなぞ マップ表説明 陸地(平地、森、山など) 海 進入不可能地域 ▲ タワー ★ 敵本拠地 ◆ 敵増援出現位置 第11話 ギルギルガンのなぞ だい11わ 「ギルギルガンのなぞ」 ピグドロンをころされたギルギルガンは とうとう みずからヒーローたちと たたかうことを けついした!! ギルギルガンは なぞがおおく うわさでは ふじみともいわれている はたして うわさはほんとうなのか!? ギルギルガンは たおれた・・・ だが やつがさいごにのこしたセリフ 「わたしは しなん!」とは どういうことなのか? ヒーローのむねに ふあんがひろがる じかい 「ふっかつ! ギルギルガン!!」 に ごきたいください 第11話マップ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 1 2 ▲ ◆ 3 4 ▲ 5 6 7 8 9 ★ 10 ▲ 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 ▲ 22 ▲ 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 敵ユニット(16体+8体) ユニット名 レベル 適正 移動力 HP こうげき すばやさ ぼうぎょ カリスマ ちゅうぎ 機体数 備考 ドーベンウルフ 9 りく 6 59 35 30 24 42 0 2体 バウ 8 りく 8 49 33 36 20 90 88 2体 ジ・オ 9 りく 8 64 36 45 24 99 95 2体 ザイ 8 りく 6 54 37 14 32 0 99 3体 オベリウス 7 そら 7 50 32 23 19 0 99 2体 クインマンサ 9 りく 8 62 36 32 29 60 0 4体 ギルギルガン[1] 7 りく 8 74 44 33 34 89 0 1体 BOSS!! ジ・オ 8 りく 8 62 34 43 23 99 95 8体 14EP、15EP、16EP、17EP、 18EP、19EP、20EP、21EP増援 攻略 この面からはギルギルガンの直属部隊なのか、更に敵のレベルが上がります。 何といっても恐ろしいのは、ギルギルガンを取り巻く4体ものクイン・マンサ。 おびき出して戦えば少し楽になりますが、辛い敵に変わりはありません。 ただ、やや逆説的ですが、前面のピグドロンを倒せたのなら、このクイン・マンサ、 及びステージボスのギルギルガンは倒せるはずです。 ユニットが不足気味なら、14EPから8体出現するジ・オを補給しておきましょう。 また「タワーを占領すると移動してくる敵」には注意しましょう。 具体的には、この面のオベリウスは始めのうち一切動きませんが、タワーの占領によってそのタワー目掛けて 移動してきます。この習性を把握していればムダな移動をせずに待ち伏せることが容易になります。 攻略情報(旧)に戻る
https://w.atwiki.jp/k2727324602/pages/384.html
1990~94年の巨大ロボットアニメ作品。 2010年5月以降鑑賞中(鑑賞済…「★」付)の作品を掲載。 ※◆付太字:メインページを設置した作品 ※タイトルは「巨大ロボットアニメ」ですが、戦闘機・戦艦・宇宙船・潜水艦等、メカが活躍するSFアニメ作品を含みます(選定基準は管理人裁量)。 ※以下、「各種データ」に関する注意。 →制作/「主たる」アニメーション「制作」「法人」を記載し、個人、『製作(企画・出資した個人・法人)』は除く(ただし、正直分類は曖昧…) →原作/(案):原案 →監督/(演):演出で、監督に準ずる役割にある人 (総):総監督、(SD):シリーズディレクター、(CD):チーフディレクター →脚本/(シ):シリーズ構成 →(協):協力、青字:法人 (参考)他の年次 →巨大ロボットアニメリスト <1990年> 作品 媒体 始期 終了 各種データ カテゴリ ◆勇者エクスカイザー TV・アニメ 1990年2月3日. 1991年1月26日(全48話) 制作サンライズ原作矢立肇監督谷田部勝義脚本平野靖士(シ) ★巨大ロボ ◆NG騎士ラムネ&40 TV・アニメ 1990年4月6日. 1991年1月4日(全38話) 制作葦プロダクション原作-監督ねぎしひろし脚本ぶらざあのっぽ(シ)、あかほりさとる(シ補) ★巨大ロボ ◆ふしぎの海のナディア TV・アニメ 1990年4月13日. 1991年4月12日(全39話) 制作グループ・タック、GAINAX(*)原作ジュール・ヴェルヌ監督庵野秀明(総)、樋口真嗣脚本大川久男他(*) ★潜水艦(宇宙船) <1991年> 作品 媒体 始期 終了 各種データ カテゴリ ◆太陽の勇者ファイバード TV・アニメ 1991年2月2日. 1992年2月1日(全48話) 制作サンライズ原作矢立肇監督谷田部勝義脚本平野靖士(シ) ★巨大ロボ ◆機動戦士ガンダムF91 劇場版・アニメ 1991年3月16日 - 制作サンライズ原作矢立肇(案)、富野由悠季監督富野由悠季脚本伊東恒久、富野由悠季 ★巨大ロボ ◆絶対無敵ライジンオー TV・アニメ 1991年4月3日. 1992年3月25日(全51話) 制作サンライズ原作矢立肇監督川瀬敏文脚本園田英樹(シ) ★巨大ロボ ◆機動戦士ガンダム0083STARDUST MEMORY OVA 1991年5月22日. 1992年9月24日(全13話) 制作サンライズ原作矢立肇、富野由悠季監督加瀬充子(1-7)、今西隆志(2-13)脚本(略) ★巨大ロボ NG騎士ラムネ 40 EXビクビクトライアングル 愛の嵐大作戦(→NG騎士ラムネ&40) OVA 1991年7月21日. 1991年11月21日(全3話) 制作葦プロダクション原作-監督ますなりこうじ脚本あかほりさとる(シ) ★巨大ロボ スパロボスーパーロボット大戦(初代) /ゲーム(GB)/1991年4月20日 第2次スーパーロボット大戦 /ゲーム(FC)/1991年12月29日 <1992年> 作品 媒体 始期 終了 各種データ カテゴリ ◆伝説の勇者ダ・ガーン TV・アニメ 1992年2月8日. 1993年1月23日(全46話) 制作サンライズ原作矢立肇監督谷田部勝義脚本平野靖士(シ)、五武冬史(シ) ★巨大ロボ ◆元気爆発ガンバルガー TV・アニメ 1992年4月1日. 1993年2月24日(全47話) 制作サンライズ原作矢立肇監督川瀬敏文脚本金巻兼一(シ) ★巨大ロボ ◆超時空要塞マクロスII-LOVERS AGAIN- OVA 1992年5月21日. 1992年11月21日(全6話) 制作AIC、オニロ原作-監督八谷賢一脚本富田祐弘(シ) ★巨大ロボ ◆ジャイアントロボ THE ANIMATION-地球が静止する日 OVA 1992年7月23日. 1998年1月25日(全7話) 制作(※話毎に変更・全4社)原作横山光輝監督今川泰宏脚本今川泰宏・他 ★巨大ロボ 絶対無敵ライジンオーOVAシリーズ(→絶対無敵ライジンオー) OVA 1992年9月30日. 1993年2月24日(全3巻) 制作サンライズ、ユーメックス原作矢立肇監督川瀬敏文脚本園田英樹(シ) ★巨大ロボ <1993年> 作品 媒体 始期 終了 各種データ カテゴリ ◆勇者特急マイトガイン TV・アニメ 1993年1月30日. 1994年1月22日(全47話) 制作サンライズ原作矢立肇監督高松信司脚本小山高生(CW)、ぶらざぁのっぽ(協) ★巨大ロボ ◆熱血最強ゴウザウラー TV・アニメ 1993年3月3日. 1994年2月23日(全51話) 制作サンライズ原作矢立肇監督川瀬敏文脚本(略) ★巨大ロボ ◆機動戦士Vガンダム TV・アニメ 1993年4月2日. 1994年3月25日(全51話) 制作サンライズ原作矢立肇、富野由悠季監督富野由悠季(総)脚本(略) ★巨大ロボ ◆疾風!アイアンリーガー TV・アニメ 1993年4月6日. 1994年3月29日(全52話) 制作サンライズ原作矢立肇監督アミノテツロー脚本五武冬史(シ) ★等身大ロボ(巨大ロボ) NG騎士ラムネ 40 DXワクワク時空 炎の大捜査線(→NG騎士ラムネ&40) OVA 1993年6月23日. 1993年9月22日(全3話) 制作葦プロダクション原作-監督開木菜織脚本あかほりさとる(シ) ★巨大ロボ スパロボ第3次スーパーロボット大戦 /ゲーム(SFC)/1993年7月23日 <1994年> 作品 媒体 始期 終了 各種データ カテゴリ ◆勇者警察ジェイデッカー TV・アニメ 1994年2月5日. 1995年1月28日(全48話) 制作サンライズ原作矢立肇監督高松信司脚本川崎ヒロユキ(シ) ★巨大ロボ 装甲騎兵ボトムズ 赫奕たる異端(→装甲騎兵ボトムズ) OVA 1994年3月21日. 1994年11月21日(全5話) 制作サンライズ、ユーメックス原作矢立肇(案)、高橋良輔監督高橋良輔(総)脚本吉川惣司 ★巨大ロボ ◆覇王大系リューナイト TV・アニメ 1994年4月5日. 1995年3月28日(全52話) 制作サンライズ原作伊東岳彦、矢立肇監督川瀬敏文脚本星山博之(シ) ★巨大ロボ ◆機動武闘伝Gガンダム TV・アニメ 1994年4月22日. 1995年3月31日(全49話) 制作サンライズ原作矢立肇、富野由悠季監督今川泰宏(総)脚本五武冬史(シ) ★巨大ロボ ◆マクロスプラス OVA 1994年8月25日. 1995年6月25日(全4話) 制作トライアングルスタッフ原作スタジオぬえ、河森正治監督河森正治(総)、渡辺信一郎脚本信本敬子 ★巨大ロボ ◆マクロス7 TV・アニメ 1994年10月2日.. 1995年9月24日(全49話)(+未放映3話) 制作ヒーロー、葦プロダクション原作河森正治監督アミノテツロー脚本富田祐弘(シ) ★巨大ロボ ◆魔法騎士レイアース(漫画原作) TV・アニメ 1994年10月17日.. 1995年11月27日(全49話) 制作東京ムービー新社原作CLAMP監督平野俊弘脚本まるおけいこ・中村修、大川七瀬(シ) ★巨大ロボ スパロボスーパーロボット大戦EX /ゲーム(SFC)/1994年3月25日
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/393.html
・――言葉には力を与える能がある ◆C0vluWr0so まず一筋の光があった。 一瞬の間にそれは広がり、極太の光砲となる。 それはJアークに備え付けられた主砲、反中間子砲の光だ。 しかし対象の装甲を原子レベルで分解するはずの三重連太陽系の超科学は、勇気の花言葉を冠する機動戦艦の重力壁に止められる。 白と赤とに彩られた戦艦、ナデシコ。幾多の戦場を越え、人と人との争いを止めた艦。 ナデシコは、その名に恥じぬ勇猛の中に反撃の意志を示し、進む。 数十条に及ぶミサイルの雨がナデシコから放たれる。 一つ一つが並の機動兵器を破壊するのに十分。爆炎の煙をたなびかせJアークへと直進する。 対し、Jアークは動かない。 弾頭が迫る。破壊の爆発を秘めた鉄塊だ。 しかしJアークは動かない。 ミサイルの軌道は幾重にも交差し、接近する。その軌道の数は無限にも思える。 だが、決して無限ではない。それは有限だ。 そして有限であるということが意味するのは―― 「トモロ、軌道チェックは終了! 軌道予測計算の時間は――」 『一瞬だ』 その予測も可能だということだ。 Jアークのモニターに、ミサイルの軌道を表す曲線が映し出される。 キラとトモロは回避行動も反撃もせず、ミサイルの軌道把握と軌道予測に全力を注いでいたのだ。 即座に演算結果を武装に反映させていく。 「キラ、急いで! 時間がないわ!」 「分かってるソシエ! ……対空レーザー砲、発射!」 Jアークから放たれた光線は数十条。その一つ一つはミサイルに対応していた。 光が走る。破砕の光だ。 ミサイルが砕けていく。穿つ光は正確に弾頭の真心を貫いていく。 光が鉄を砕ききる。 場は静寂に帰った。 「……ソシエ、ムサシたちと通信は?」 「駄目。ムサシだけじゃない、テニアも、マサキも……」 「なら……」 再び戦場に音が響く。 『キラ、残存火力が40%を切った。長期戦になれば押し切られるぞ』 トモロの声と爆縮の音が同時に鳴っていく。 ナデシコから放たれたのは触れるものを全てを消し去る重力の波、グラビティブラスト。 だが、ビルの街を呑み込み、それでも衰えることなく迸る破壊の閃流に対抗できる武装が、Jアークには存在する。 「僕は三人が帰ってくるまで……この艦を守ってみせる!」 Jアークの艦首に存在する錨。ジュエルジェネレイターから抽出されたエネルギーがそこに注がれる。 そして姿を変えてゆく。不死の象徴――火の鳥、フェニックスへと。 JクォースはJアークに備えられた武装の中でも一際強力なもの。 破壊力、貫通力、射程。その全てに優れ、身に纏う炎はバリアにも攻撃にも利用可能である。 だが今は、変幻自在の軌道は必要としない。ただ一直線に突き進むのみだ。 火の鳥は往き、重力の波へと突撃した。 翼を呑み込む荒波を、しかし天空の風の如く捉え、Jクォースは進む。 炎は重力に掻き消される。だが同時に重力も相殺されていく。 不死鳥が波を越えるのと波がJアークを呑むのには、一瞬の乖離も無かった。 Jアーク艦内に衝撃が走る。 「きゃあああああああ!」 Jクォースにより相殺されたとはいえ、グラビティブラストの破壊力は並々でない。 たとえJアークであっても、無傷ではすまない。しかし、大破もしない。 そしてモニターには、Jクォースの攻撃を受けているナデシコの姿が映っている。 「トモロ、ジェネレイティングアーマーを全開! ここを耐えれば……いけるはずだ!」 『了解だ。一時的に艦の全エネルギーをジェネレイティングアーマーに回す』 Jアークの装甲が重力波によって削られていく。だがキラは後退しない。 なぜなら―― 仲間のために自分を懸ける、それがキラの勇気だからだ。 ◆ 月が照らす街並みは、既に残骸と化している。 地上に這い出たテニアは、目前の光景に唖然としていた。 無理もないだろう。ほんの数十分前までは多少の損傷はあれど街の姿を保っていた。 だが今現在そこに在るのは、高くそびえるビルでもなく、雑多な商店街でもなく、閑静な住宅街でもなく、瓦礫のみなのだから。 彼女は崩壊の直前、いやその最中まで戦闘をしていた赤と黒の機体を探す。 しかしどこにも姿は見えない。おそらくはこの瓦礫の底に埋まっているのだろう。 代わりに目に入ったのは、混乱のきっかけとなった黒いガンダムと、見知らぬ二つの機体の戦闘だった。 三機と自機との距離は数百メートル、といったところだろうか。おそらく三機とも、まだこちらに気づいていない。 不意を打つには絶好の機会だ。だが―― (それじゃ、ダメだ) 更に遠方、Jアークが戦闘を行っている。相手はこれまた見知らぬ、だが巨大な戦艦だった。 そして遠目に見る限り、Jアークは決して優勢ではない。 左舷が焦げ、各所にも少なからず損傷が見える。 ここから劣勢をはねのけ、自分とJアークがあの戦艦に勝ったとしても、確実に今後の戦闘には支障がでるはずだ。 (考えるんだ。勝つためには……生き残るためには何をすればいいのか) いつの間にか、ダイはその身を無惨に晒している。 あれだけの巨体が簡単に墜ちる。ここは、そんな戦場なんだ。 気を抜けば、何時死ぬか分からない。 でも、その混乱を利用すると決めたのは自分だ。 けれど、アタシは生き残るための良策を何も思いつけない。 あるのは奇策。しかもとても脆い、危険な策だ。 (それでも……やるしか、ないよね) 絶対に、生き残る――そう決めた少女は、歩を一つ進める。 ごくり、と唾を飲み込んだら、鉄の匂いに自分の口の中が切れていたのに気づいた。 血の臭いに記憶を揺さぶられ、カティアの最期が脳裏に浮かんでくる。 頭の潰れた、トマトみたいな姿のカティア。 アタシは厭。あんな姿になるなんて。 「……やる。やってやる。アタシは、生き残るんだ」 はっきりと口に出すことで、思いは強くなる。 メルアも死んだ。カティアも死んだ。フューリーも死んだ。 でもアタシは死なない。絶対に、だ。 鉄の匂いは消えない。血臭が鼻まで抜けて、気分が悪くなってくる。 「生き残るんだ……生き残るんだ……生き残るんだ……!」 言葉の力は凄いな、とテニアは思った。 思いをはっきりとした形にして、自分にも、他の誰かにも伝えることが出来る。 会えたら伝えよう。統夜に。死んでくれって。 通信機のパネルを弄る。 言葉の力は凄いな、とテニアは思う。 「……ムサシ、大丈夫!? アタシだよ、テニアだよ!」 思ってもいないことでも、伝えられるから。 ◆ 背中に響く痛みが、武蔵を微睡みから目覚めさせる。 鈍い痛みの原因は、ダイによる無差別攻撃だ。ガンダムは巨体の起こした地震に呑まれ、武蔵ごと瓦礫の下で倒れていた。 目を開けた武蔵の視界に入ったのは瓦礫だけを映すモニター。未だ醒めない頭をぶんぶんと振り、無理矢理覚醒させる。 そして自分の状況を把握するまでにきっかり十秒。 「そうだ、おいらは……!」 ガンダムのマニュピレータを稼働させ、機体を覆う瓦礫を払っていく。 サブカメラ上の岩が除けられた時、モニターに映ったのは無惨の二文字で表現される光景だった。 ガンダムが落ちたのは地下道か何かだったのだろうか。既に地盤は広域に渡って沈下しており、元々の地形を推測することさえ難しい。 基礎となる地盤を失った建築物。形を留めているものは皆無だった。全ては石とアスファルトの切片と化している。 バーニアを噴かし、ガンダムは地上へと飛ぶ。 地上に見える光景も地下から見たそれと大差なく、街の被害は甚大だ。 「……! ダイはどこだ!?」 こんなことが出来るのは、無敵戦艦ダイの巨体しかない。 そう見当をつけた武蔵は無敵戦艦ダイの姿を目で追った。 だが、武蔵の目に入ったのは、廃墟と化した街と同様に無惨な姿を晒しているダイの残骸だった。 頭も足も腹も、欠損が酷い。あれではまともに動かないだろうと武蔵は思い、ダイを討つことができた、という事実に安堵の息を吐く。 だが、その安堵は長く続かない。キラたちと通信を取ろうと振り返った武蔵の目に映ったのは、攻撃を仕掛けてきた黒いガンダムと見知らぬ二機の戦闘。 遠くにはJアークと交戦している戦艦の姿も確認できる。 ――戦いは、未だ終わっていない。 そのことに気づいた武蔵は、通信機に手を伸ばす。 「キラ! こちら武蔵だ! そっちの状況はどうなってるんだ?」 『……武蔵さんですか!? 無事だったんですね!』 通信機を通して聞こえてくるキラの声に余裕は無い。 そこからJアークの戦況を推し量った武蔵は、 「ダイはもう倒した! おいら達もやられる前に逃げるぞ! テニアとマサキはおいらが捜す。キラたちはそいつをなんとかしてくれ!」 『了解です。武蔵さんが二人と合流次第、僕たちもそちらへ向かいます!』 『キラ、敵の攻撃の第二波が来たわ!』 『武蔵さん。――必ず、生きて帰りましょう』 通信の最後、ソシエの叫びにも似た声が聞こえた。 やはりキラたちの戦況は思わしくないようだ。 両の手のひらで頬を打ち、気合いを入れ直す。 ――急げ、時間がないんだ! すぐにでも二人と合流しなければいけない。 まずはマサキとの通信を試みる。だが―― 「繋がらねぇ……! 出てくれよマサキ……!」 何度も何度もコールを続ける。しかしマサキの乗るアルトアイゼンからの応答はない。 マサキもまた、この地震に巻き込まれ、瓦礫の下敷きとなっているのだろうか? アルトアイゼンの状態はお世辞にも万全とは言い難い状態だった。脱出も困難な状況にあるのかもしれない。 そう思った武蔵に、別の機体から通信が入る。 『……ムサシ、大丈夫!? アタシだよ、テニアだよ!』 それはもう一人の仲間、テニアからの通信だった。 その声が聞けたことに、単純に安心を覚える。 「テニア、無事なのか?」 『アタシは大丈夫。それより、ダイは……』 「大丈夫だ。ダイはもう動きはしないさ。……それよりマサキはどうなってるか分からないか?」 『ゴメン、アタシにも分かんない。でも、きっとこの近くにいるはずだよ! あの三機をどうにかしてでも助けないと……!』 「……ああ、そうだな。みんなで……生きて帰るんだ! テニア、まずはおいらがあいつらの戦闘に乱入する。テニアは後から援護に入ってくれ。 上手くいけばそれで逃げてくれるだろうし、悪くても三つ巴……分は悪いかもしれねぇけど、やるぞ!」 テニアからの了解の声を聞き、最後にもう一度だけマサキに通信を入れる。 やはり、応答は無かった。レーダーにも反応は無いままだ。 操縦桿を握る手に力が入る。正直に言って……怖い。 ここから見える戦闘でも分かる。あの三機の戦闘は、かなり高レベルな攻防だ。 パイロットの技量だけの問題ではなく、単純な機体スペックでもかなり劣っているだろう。 それに加え、ガンダムはさっきの地盤崩壊の際に少なからずダメージを受けている。 このままではあの三機とまともに渡り合うのは難しい。 「だけど、それでもキラは言った。みんなで生きて帰ろうってな……」 ――なら、ここでおいらが踏ん張らなくてどうするんだ! 自身に活を入れ、深く息を吐く。 一瞬後、ガンダムは一気にバーニアをフル稼働。駆けていく。 手に持つのは鉄球。ビームやレーザーなどの科学の結晶とはかけ離れた、酷く原始的な鉄の塊だ。 だが、 ――性に合ってるんだ、こういうのの方がな! 目指すのは黒と赤のガンダム。鎖を振り上げ、振り下ろす。 突然の右方向からの打撃に、咄嗟に相手は右足で地を蹴り、攻撃の逆――左方向へと飛ぶ。 攻撃と移動の力のベクトルは同じだ。衝撃は受け流される。 だが攻撃が外れたことに気を落としている暇はない。 ガンダムの姿勢を立て直し、後方の二機の攻撃に備える。 敵の敵は、必ずしも味方ではない。今確実に味方だと言えるのはJアーク、ベルゲルミル、アルトアイゼンの三機だけ。 それ以外の相手に対しては、一瞬の油断も許されないのだ。 汗と震えが身体を襲う。それに打ち勝つために、武蔵は雄叫びを上げる。 戦いは、まだ始まったばかりだ。 ◆ 黒が跳ぶ。しかし真黒ではない黒だ。血にも似た赤が、黒に彩りを添えている。 跳んだ先には白い機動兵器、ヴァイクランがある。 だが猪突はしない。まずは牽制のダークネスショットを放ち、相手の体勢を崩す。 二発の光球が、同時にヴァイクランに向かった。更にタイミングをずらし一発。 もし相手が先に撃った二発を回避しようと、後発のダークネスショットが息つく暇を与えない。そのはずだった。 しかし、ヴァイクランは悠然と宙に浮かび、回避の素振りも見せない。 その余裕の理由は、ダークネスショットが炸裂する寸前に分かった。 「バリアだと? ラムダ・ドライバ……とは少し違うようだけどな」 白の機体を包むように現れた壁。それがダークネスショットを掻き消した。 ガウルンの知る、物理法則を超えた力――ラムダ・ドライバ。 精神の力をエネルギーに、というコンセプトはこのマスターガンダムに通じるところがあるかもしれない。 だが、マスターガンダムに備えられたシステムがあくまで機体のポテンシャルを高める、いわば補助にすぎないのに対し、ラムダ・ドライバのそれは、システムそのものが力を生む。 産み出された力を弾丸に纏わせれば、その破壊力は倍増し、防御のイメージを盾として展開すれば、理論上は核さえ防げるという代物だ。 相手の機体が展開した力は、ラムダ・ドライバのバリアに相似している。 展開の形・規模など、細部に異なる部分はあるが、基本の部分はそう変わらない可能性も高い。 つまり、あのバリアも核クラスの攻撃――ともすればそれ以上の破壊さえも耐えるかもしれない、ということだ。 「ククク……面白くなってきやがったぜ!」 ガウルンは、愉快に、まるでお気に入りの玩具で遊ぶ子供のように笑っている。 ……しみったれた攻撃が届かねぇってんなら――直接ぶん殴ってやるさ! 未だ跳躍の途中だったマスターガンダムは、強引に軌道を変え、地上に降りる。 着地の衝撃で道路の舗装が砕け、宙に舞う。 踊る破片の一つを掴み、投擲。 投げられた石片は何の変哲もないただの石だ。 だが、だからこそ意味がある。力が無いということが意味を生む。 この程度の攻撃、無駄なエネルギーを消費するまでもない、とヴァイクランは石を造作もなく避ける。 しかし、その回避という行動がタイムロスという名の致命を導く。 機体を動かし、目を離したのは一瞬。 もしヴァイクランが念動フィールドを展開し、マスターガンダムと相対したままなら生まれなかっただろう一瞬の隙。 その一瞬の間に、マスターガンダムはヴァイクランのメインカメラの視界から消えた。 相手の知覚の外から放たれたダークネスショットは、今度こそヴァイクランの装甲に炸裂する。 敵機がよろめいたことを確認。ガウルンは追撃する。 両足に力を込め、同時に地を踏み抜く。二つの脚から発生する二つの力は、両足を同時に踏み抜くことで一つの大きな力になる。 加速する。 二機の距離は縮まっていく。 ヴァイクランが、再動し、ガウルンを捉え、反撃か回避か防御かの選択という三つの工程を必要とするのに対し。 「……遅いねぇ。このまま突っ込ませてもらうぜ」 マスターガンダムは、接近し、攻撃する、という二つの工程でその意図を果たす。 覆せない一工程の差は、絶対的だ。 ――あくまで、この二機に限定すれば、の話だが。 月影に照らされ走る黒のガンダム。闇の中、保護色になっているその黒を月は煌々と照らしている。 敵機までの距離は残すところ100メートル強。その程度、秒の単位でこと足りる。 そこまで進んだとき、マスターガンダムの姿が闇に紛れた。 ガウルンが何かをしたわけではない。 ガウルンの上空に、それは現れたのだ。そして、ガウルンを照らす月の光を遮ったのだ。 直後、市街地に熱が走る。攻撃の意味を持った熱だ。 しかし、灼かれるのはマスターガンダムだけ。同様に攻撃範囲に入っているヴァイクランには何の影響も無い。 マスターガンダムの上空に浮かぶ赤の異形はディバリウム。 対象を識別し、かつ広範囲の攻撃が可能なディバリウムにとっては必要な工程は一つ。 ただ攻撃を放つ、それだけだ。 同士討ちの危険性が無い攻撃。そしてそれが持つ充分な攻撃範囲は、多少のずれを無視しマスターガンダムを灼いてくれる。 ディバリウムの攻撃は、マスターガンダムとヴァイクランの間に存在した絶対的な一工程の差を埋める。 マスターガンダムが減速した。即座に再加速を試みる。が、生まれたタイムロスは一瞬だが確実。 ガウルンがヴァイクランに到達する前に、ガン・スレイブがマスターガンダムを狙っていた。 ガン・スレイブの数は四。 同時に攻撃してきた最初の二基は問題ない。左右の高速フェイントがガン・スレイブを惑わし、最高速度までの加速が惑う二基を一気に抜き去る。 次の一つは装甲を掠めた。左肩が持っていかれる。しかし腕は健在。これも十分許容範囲だ。 三基目を抜いたとき、ようやくヴァイクランが手に届く距離に来る。 狙うのは胸。ビームナイフの一突きで、相手の機能を停止させるのが目的だ。 ヴァイクランが念動フィールドを展開するが、この距離なら問題はない。 バリアを突き破り、内側へ。右腕を後ろに引き、右手に握られたビームナイフを起動させる。 光の刃が展開するのと同時に、まっすぐ相手の胸へ向かって突きの一閃。 刃の切っ先が装甲に触る。更に奥まで押し込もうとするが、 「チッ! 素人相手じゃあるまいし、まっすぐ胸ってのが甘かったか」 マスターガンダムの右腕をヴァイクランの左腕が掴み、それ以上の刃の進行を止めている。 次にガウルンが感じたのは殺気。 ……上かッ! ガン・スレイブ最後の一つが直上からガウルンを狙っている。 直撃。頭部が大きく歪む。 ヴァイクランはマスターガンダムを投げつけ、地面へと叩きつけた。 「……ッ!」 たまらねぇ、とガウルンは思う。 相手は強い。単純なタイマンなら、そうそう引けを取るつもりはない。 マスターガンダムと自分との相性は悪くなく、接近戦に持ち込めばたいていの相手には負けない自信もある。 だが、相手は二機だ。それも、かなりのコンビネーションを見せてくれる。 だから、 「……たまらねぇ。このまま――美味しく頂きたいねぇ」 ゆらり、とマスターガンダムは立ち上がった。 血がだんだんと熱を帯びてくるのが分かる。そのくせ、頭の中はやけにクリアーだ。 ……ああ、アイツは――アキトはどうしたかな? アイツの矛盾原因を踏み潰して……それからどうなったのかよく分からない。 何か叫んでいるようだった。それから、消えた。 一瞬で消えちまったんだ。ククク……面白いじゃねぇか。 全くもって楽しすぎる。ここにいる奴らはよ! なーに、アキトだって死んじゃいないさ。ここで死ぬような奴じゃない。ここで死ぬような面構えもしちゃいねぇ。 ――だから今は、この時間を精一杯楽しもうぜ、ガウルンよぉ! その時、ガウルンは視界の端で何かが動くのを見た。 意識をそこに向けたとき、飛んできたのは鉄球。 完全な回避は間に合わないと判断する。出来るのは逆方向に跳び、衝撃を受け流すことだ。 右足に力を込め、左方向へ跳躍。鉄球は胴に当たるが、ダメージは殆ど無い。 攻撃してきたのは誰だ? 視線を向ける。そこにいたのは白い機体。 思わぬゲストの乱入に、ガウルンは舌なめずりを我慢できない。 ……あのアンテナ、カメラアイ……アイツも、『ガンダム』なのかい? 楽しいねぇ、実に楽しい。 そんなガウルンに更に通信が入る。 『ねぇ、アンタ……勝ち残りを狙ってるの?』 モニターに映っているのは赤毛の少女だった。 まだ幼さが残る顔立ちの中に、ガウルンは自分に少し似た、何かを感じる。 ぶしつけに言葉をぶつけてくる少女に純粋な好奇心を持ちながら、返事。 「お前、誰だ? ……まぁ、結果的にはそうなっちまうかもな。俺はただ、楽しめればそれでいいんだがよ、帰って会いたい相手がいるもんでなぁ」 邪悪な笑みを隠そうともせずに、ガウルンは少女の質問に答える。 今の答えに嘘はない。楽しめればそれで良いと、ガウルンの中の戦闘狂は考える。 それと同時に、ガウルンはカシムに会いたいと思っている。 そしてそれらは矛盾しない。『殺し』を楽しみ、生き残り、帰り、『カシム』に会う。 全くもって無駄がない。殊にこの世は上手く出来ている――そう考えている。 だから少女が次に言った言葉にガウルンは興味を持った。 『なら、アタシがもっと楽しくしてあげる、……って言ったらどうする?』 ◆ 目の前の黒い機体はあの戦艦に与する者の攻撃を受けた。 その事実についてシャギア・フロストは思考する。 ……つまり状況は、単純ではないということか。 今までは恐竜型戦艦を中心としたグループが、ジョナサンとか言った男の戦艦及びその一味に襲われたという認識だった。 つまり一集団と一集団の総力戦、ということだ。 だが、眼前の黒いガンダムタイプ――これは異質の存在だ。どの集団にも属さずに、乱戦の中を駆けている。 ダイを中心としたグループは、既に壊滅状態だ。戦いの軸は、あの戦艦とナデシコのそれに変わっている。 この状況を作り出したのが黒いガンダムなのだとすれば―― 「オルバ、油断するなよ。この戦場――私たちが思っていた以上に複雑だぞ」 『分かってるよ、兄さん。……それで、あの白いガンダムはどうするんだい?』 オルバの言葉に、シャギアは奇襲を仕掛けてきたガンダムに目を向ける。 昼に戦ったときとは違うガンダムだ。だが、あの戦艦と行動を共にしていることと、戦闘行為を仕掛けてくる好戦的な点は変わらない。 ならば対応は一つ。 「あれもまた私たちの敵だ。黒いガンダム共々落とすぞ」 『分かったよ、兄さん』 シャギアがヴァイクランでフォワード、オルバがディバリウムの広範囲識別兵器でバックアップ。 この基本フォーメーションを崩さずに二機を同時に相手にする。 上手くいけば、ガンダム同士で潰し合ってくれる――そこまで確認したとき、ヴァイクランとディバリウム、二機の通信用モニターが同時に作動した。 「通信だと? 一体どこの誰が――」 モニターに映っているのは赤毛の少女だった。 目を赤く腫らし、潤ませている少女は、開口一番こう叫んだ。 『――助けて!』 と。 →・――言葉には力を与える能がある(2)
https://w.atwiki.jp/wiki1_popn/pages/4.html
カテゴリ ジャンル・曲名 BPM 譜面傾向 コメント 5 ヘヴィロックEX 160-170 同時押し 中盤が少しきついが、後半で大幅に回復可能。37では簡単。 7 キョウゲキEX 60-180 発狂、同時押し 低速地帯終了まではHと同じような譜面。ラストに待ち構えている規則的な配置の発狂は手を止めてしまったら負け、右手の7→8交互押しはあんみつもアリか。 8 ラウンジポップ(8)H 160-176 同時押し、交互連打 ダブル階段と5つ押しが7回で抜けた時点でゲージがないと辛い。終盤は黄色の一定リズムなのでそれにあわせて他を叩くとリズムがとりやすい。 ラグタイムEX 190 発狂 序盤から中盤までは手の配置を気をつければ問題ない。中盤から最後までは右手のすばやい動きが必要なので練習。 ラストはあんみつしてしまうと楽。スパランをかけるととんでもないことになってしまう。 レディメタルEX 124 階段 終盤が階段譜面。階段が得意なら簡単だし、道中がぬるいのでランダムにも耐えられる。 9 ウィンターダンスEX 125 乱打 Hのラストの乱打が序盤から続く。終盤に近づくにつれ同時押しが多く混ざるので、集中を切らさないように。 オイパンク0H 90-360 交互連打 BPMはほとんど360。交互押し中心の譜面。交互押しが苦手でなければ37ではかなり簡単。ただし、運動量の関係で、若干体力勝負。 カントリービーツEX 145 階段 全体的に階段の多い譜面。途中螺旋階段が2回小刻み階段が1回といやらしさ満点。譜面を感覚で覚えないと出遅れる。刻みが細かいので大きく叩くと押しそびれる。 ピーチアイドルEX 155 同時押し 三角押しの混ざった8分同時押しがひたすら続く。同時押しが苦手でなければ、37では比較的簡単。判定がやや厳しく、ゲージが上がりにくい。 10 カドルコアEX 174 階段 やや癖のある階段譜面。左右一方に偏る部分は片手で処理すると分かりやすい。 カラフルポップEX 160 階段 37にしては難しい。たびたび現れる2,3,4、3,4,5などのミニ階段+α地帯が難所。ラストは2,3個のゴミは無視し同時押しに集中しよう。 グランヂデスH 140-175 同時押し、縦連打 # 11 イズモEX 125 同時押し、階段 同時押しのズレは無視してかまわない。発狂っぽい場所は、ベースとなっている階段を意識する。 大江戸カヨウEX 130-206 左右振り 最初の数秒のみBPM130で、その後は200- 4つ4だけの後に206。マジ-Skaのカヨウ物は3連符を基に作られているので跳ねるように押すとよい。後奏部分の青白を中心とした腕を振らせる配置に注意。 大河REMIX EX 45-145 発狂 ラストに両手縦連打の発狂がある。 ナンキョクEX 140 発狂 緩急がついた譜面。癖は少なく、実力を要する。5倍でプレイすると譜面がスッキリしてクリアしやすい。 ホンコンユーローEX 150 交互連打、発狂 交互連打は適当に押してもあまり減らない。左右の交互押し(323232...+787878...など)に混じる赤は無視してもかまわない。ラス殺しがきつい。 リンセイH 164 総合 素早い手の動き、多くの技術を要求されるので終始気が抜けない。さらにややラス殺し気味。37ではかなり難しい部類。 いろは アジアンコンチェルトEX 74 階段 かなり遅いのでHSを間違えないように。中盤~終盤にかけての猛烈な階段に注意。乱をかけると大抵簡単になる。6倍速でも遅いようなら、4倍速×オジャマ2速で8倍速にしたり、5倍速×オジャマ2速で10倍速にしてみてもいい。 ヒップロック3H 105-180 同時押し やや単純な同時押しラッシュが続く曲。中盤の長い低速地帯と、終盤の複雑なフレーズに注意すれば問題無くクリアできる。 クリスマスプレゼントEX 70-180 ソフラン、総合 全体がメドレーになっていて、曲が変わると譜面も変わる。終盤の階段地帯と、その後の低速地帯のいやらしい同時押しが難所。 ガムランEX 180 乱打、発狂 中盤に強烈な殺し譜面がある。これを抜けた時点でゲージが空になっていると精神的に辛い状況に陥る。さらに終盤に7+8の長い交互押しが存在するので気が抜けない。 ニンジャ卍ヒロインEX 170? 同時押し ラストに3ノーツ高速無理押し(1→5→8)で振ってくるのでボーダーで最後に行ったら気を抜かないように。最後は空BADしなければBADでもクリアできたりもする ee MALL スウィング歌謡EX 96-208 # # イーラップ2EX 169-189 # # EXPERIMENTRAP EX 185 # 押しにくい同時押しが急に出てきたりするので注意。
https://w.atwiki.jp/aakumikyoku/pages/60.html
替え歌 37 = YATTA! / はっぱ隊 替え歌をここに 元歌詞 37 = YATTA! / はっぱ隊 (YATTA! YATTA!) 大学合格 (YATTA! YATTA!) 社長就任 葉っぱ一枚あればいい 生きているからLUCKYだ! (YATTA! YATTA!) 当選確実 (YATTA! YATTA!) 日本代表 やんなるくらい健康だ Everybody say YATTA! 変更した方がいい箇所などどうぞ 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/267.html
全ては愛のため ◆u34lXU/BOY 「どうしよう、これから……」 機体に乗り込んだはいいが……これからどうしよう? テニアは町の片隅に機体を移し、行動の指針を考えていた。 このゲームには、彼女の知り合いが3人いる。すなわち……統夜、カティア、メルアの三人。 統夜は確実にゲームに乗らないと思う。 最初の頃は、頼りなく、すぐ怒鳴ることもあった彼は、闘いを通して成長した。 アル=ヴァンにも認められるほどに。カティアと、メルアもとてもゲームに乗るとは思えない。 「やっぱり、統夜達を探すのが一番かな?」 しかし、どうしても嫌なイメージが頭の片隅に残る。 先程、首を吹き飛ばされた女性の姿が焼きついてはなれない。3人がゲームにのっていなくても、確実にゲームに乗る人は現れる。 その人たちが、統夜達を殺さないなんて保証はどこにもない。 カティアやメルアは、私と同じで、そこまでうまく機体を扱えない。死ぬかもしれない。 が、統夜は大丈夫だろう。 統夜の腕なら、絶対に負けない。負けないはずだ。それでも、なおあの女性の姿が統夜とダブる。 (そんなはずない!統夜なら絶対に大丈夫だ!) 目をつぶり、頭を振って幻想を振り払う。そうだ、彼の腕は一緒に乗りつづけた自分が一番知っている。 「はぁ……」 ため息をつき、違うことを考えることにする。じゃあ、仮にうまく合流できたとして……それからどうする? このゲームから、脱出する?どうやって?首輪はどうする?脱出の方法なんて、思いつかない。 なら、結局一人になるまで戦うしかないのか?あの化け物は、願いをかなえてくれると言っていた。 ふと、くだらない仮定が頭をよぎる。統夜は負けない。負けないなら、勝つということだ。 もし、統夜が一人勝ち残ったとして……彼は何を望むだろう。 もし、誰かを生き返らせるとかなら、誰を生き返らせるか? どこまでもIfの仮定。実はまったく違うのかもしれない。でも…… 体が縮こまるのがよく分かった。もしそうなったら間違いなく、自分ではない。生き返らせるなら、おそらくカティアだろう。 最後の戦いの前、彼女が統夜に告白して……それから2人は一緒に住んでいるのだ。 確かに、統夜は私たちを嫌ってはいない。でも、今彼が一番強く好意を寄せているのは間違いなく…… カティア 胸が、締め付けられるように痛い。 あの時、ラフトクランズを統夜が拾ってきたとき、自分もすぐに統夜がどうしようとしているかわかった。 統夜と離れるのが、どうしても嫌だった。だから、私は格納庫に行って……統夜とカティアを見つけた。 そして、2人が話していることも…… ほんの、ワンテンポの差だった。もし、あと数分早く格納庫についていれば、全て逆転していたはずだ。 でも、現実は今目の目にある通り。カティアと、統夜はお似合いだと思う。 それに、カティアは私の大切な友達だから…… 自分も統夜が好きなのに、妥協して。 今になって、いや今まで感じていたけど、隠していたものが、こんな状況になって噴出した。 自分はとても惨めだ。 抱き上げた膝に顔を埋める。しばらくそうしていたかった。けど、それも許されない。 「あ、あの、誰か乗ってますか~?返事をしていただけませんか?」 「その声……メルア!?」 「ええっ?テニアちゃんですか?」 自分の殻にこもっていたからだろう。気付かなかったが、何時の間にか目の前にメルアの乗った機動兵器があった。 「よかった~、心細かったんですよ、こんなことになっちゃって……」 「いや、こっちも同じだよ。でも突然目の前にいるんだもん。驚いちゃったよ。」 さっきまでの自分を隠して、「いつもの自分」を貼り付ける。 殺し合いの場に似つかわしくない会話がそこにあった。 「いっしょに、統夜さんを探しましょう」 しばらく、くだらないことを話した後、メルアが言い出した。 「え……」 「どうしたんですか?」 つい、言葉に詰まってしまった。少しだけ、「いつもの自分」がはがれそうになる。 「いや、なんでもない。一緒に行こう!」 そう言って二人並んで移動しようとしたとき、 カラン、カラン…… 「?」 空から、小石より少し大きい程度の石が降ってきて、機体にぶつかった。 見上げると、ビルの屋上に、ある巨大な影があった。 「テニアちゃん、あれ!」 「わかんない、どうする、話し掛ける!?」 私たちがうろたえる。その間に、赤いマフラーをなびかせ、空へと舞い上がり、 「避けて!テニアちゃん!」 足が突然紫電を走らせ、こちらに急降下してくる――! 私は左に、メルアは右に。咄嗟に機体を横っ飛びさせる。 さっきまで自分たちがいた場所に、稲妻の弾丸が落ちてクレーターを穿つ。 「逃げましょう!テニアちゃん!」 「でも!そっちにいけそうにないよ!?」 「別々です!逃げるほうが先決です!見てください!」 見ると、50mはあろうかという巨人は、ゆっくりとメルアのいる場所に方向転換していた。 迷っている暇はない。 「分かった!またあおうね!」 喋りながらも機体をフル稼働で移動させる。向こうもまた、同じだった。 「はい!必ず統夜……」 突然、メルアとの通信が途絶えた。砂嵐のような、不快な音を残して。 「メルア……?」 嫌な予感がする。とても、嫌な予感が。 油が切れた機械のように、ぎこちなく振り向く。 ラフトクランズ。 青いラフトクランズだった。 メルアを串刺しにしたのは。 「メルアッ!嘘でしょ!?返事して!!」 もう写らない通信機に叫ぶ。しかし、答えはない。代わりに聞こえてきたのは…… 「我らがフューリー再興のためにィィィ!!我がラフトクランズの塵となれェェェ!!」 あの、グ=ランドンの声だった。 「そんな……」 グ=ランドンは確かに、あの時死んだはずだ。なのに何故!? 「貴様らまとめてェェェ、ヴォーダの闇に送ってくれるゥゥゥッ!!」 「訳分からないこと叫んでんじゃねぇ、ジジィ!」 マフラーをまいた巨人から声がした。 「我を阻むものに呪いあれかしィィ!!」 Fモードのソードに突き刺さったメルアの機体を振って、巨人にぶつけようとする。 しかし、巨人は回し蹴りを繰り出して、いとも簡単にそれを砕いた。 もう、間違いない。 メルアは死んだのだ。 「ああ……ああああ」 さっきまで考えていたことが、現実となった。 「あああああああああああああああッ!!」 そして私は、訳のわからない叫びを残し、逃げるように走り出した。 テニアが逃げ去る間、どちらもテニアにもう目を向けることもなく、お互いの敵を見据えていた。 「我が剣でェェェ!!消えろォォォ!!」 Fモードのソードを最大まで伸ばし、巨人……大雷凰に振り降ろした。 「そんな長物に当たるかよ!」 軌跡を完全に見切り、一気に竜馬が……大雷凰が駆ける。 しかし、地面に当たると同時、Fモードのクリスタルは砕け散り、刀身が消滅する。 一気にラフトクランズに高速で接近していた大雷凰に、通常モードに戻った刃を横薙ぎに切った。 「チィィィィィィッ!!」 ついた慣性でそのまま吸い込まれるようにラフトクランズが迫るが、ギリギリで両足で踏ん張ってブレーキをかけた。 残った前方へ流れる力を使い、前方宙返りの要領でラフトクランズの頭を超える。 「おりゃぁぁぁ!!」 「むぅぅぅん!!」 お互い振り向き様に、電撃の足を、水晶の剣を振るう。 ぶつかり合い、拮抗した力が周りに物理現象となって破壊していく。 だが、やはり10m近いサイズの差のため、上から押しつぶすように力をかけられ、ラフトクランズが膝を突く。 「まだだ!まだ負けぬゥゥゥ!!」 急にラフトクランズの輪郭がおぼろげになり、左右2対ずつ、計4体のラフトクランズが姿をあらわした。 「何ィ!?」 「我がフューリーの技術はァァァアアア世界一ィィィィイイ!!」 4体が、本体のラフトクランズを抑える大雷凰に特攻同然でぶつかっていく。 するとたちまち緑の結晶へと変化し、大雷凰を包み込んだ。 「絶望せよぉぉぉぉぉヲヲヲオオオオオォォォヲ!!」 拘束を逃れたラフトクランズは後ろに引くように飛び上がり、ソードモードからガンモードへと武器を切り替え腹へ接続した。 「オルゴンライフルゥゥファイナルモォォードーォオッ!!」 緑のエネルギーの濁流が大雷凰を消し飛ば…… されなかった。 「おおをををおおおお!?」 「このジジィィィ!!死にやがれぇぇぇ!!!」 驚くことに、大雷凰は僅かに露出した両足のブースターを全力で動かし、その状態のまま空へと舞い上がったのだ。 咄嗟に武器を捨て、シールドとオルゴンクラウドを展開する。 そこへ大雷凰がぶつかった。 オルゴンクラウドを難なく貫いた大雷凰によりシールドを弾き飛ばされ、ラフトクランズは姿勢を大きく崩した。 対して。 「これで終わりだァァ!ライジングメテオ・インフェルノォォォォ!!!」 ぶつかった衝撃で水晶を砕き、自由になった体が、勢いを更に上乗せして迫る! 胸のプラズマコンバーター展開し、足のブースターが唸りを上げた。 明度が3段階は上がるような稲妻がラフトクランズを焼く。 「うぉぉぉおおおおおおお!!!」 ラフトクランズの体が真っ二つになり、下半身が爆炎を撒き散らす。 そして、大雷凰は静かに大地に降り去った。 ―― 一方 いったいどれほど走っただろうか?私には、丸一日走った気がする。 メルアが死んだ。もう、会うこともない。できない。涙で前がろくに見えなかった。 「あっ!?」 ベルゲルミルがすっ転んだ。自分が、前も見ずに動かしていたからだ。 こけて地面に突っ伏す形になると、色々混ぜ込んだわけの分からない思いがとめどなく沸いてくる。 私は友達一人、助けられない。統夜と一緒にいたい。統夜ならどうにかしてくれる。でも、統夜は本当の意味で私なんて見てない。 カティアもこんな風にいつ死ぬか分からない。カティアは死んでも生き返る。でもメルアはもう無理だ。私は…… 突然、目の前に緑色の光が展開される。そして、姿をあらわしたのは、上半身だけとなったラフトクランズだった。 「っ……!」 機体を引き起こして距離を取る。 「おお……おおぉぉ……」 聞こえてくるのは、呻き声。 マシンナリーライフルを抜いて、ラフトクランズへ向ける。さっきまで自分の中に溜まっていたドロドロをまとめて掻き出すように叫んだ。 「あんたが!何で生きてるのよ!しかも……なんでメルアを!」 しかし、テニアの激情に、グ=ランドン心底不思議そうに答えた。 「フューリー再興のため……我らが民のため……我ら以外の種族など……」 こいつは生きてるときと一緒だ。ほかの人たちのことをまるで考えてない。ゴミ程度にしか考えてない。 トリガーを抑える指に力が入る。 「なんで……そんな理由のために!?」 「ならば……お前にはないのか?」 「何が!?」 「胸をかきむしるほどに願い、腕を伸ばしても届かなかった願いが……変えたい過去が!」 「……!」 胸をかきむしるほどに願い、腕を伸ばしても届かなかった願い……変えたい過去…… ある。それは―― 「戦争の勝者を変え、フューリーに栄光を……!この闘いは……その最大の機会なのだぁぁぁ……!」 「それは……」 パシュ 軽い音を立てて、ラフトクランズのコクピットは消え失せた。 メルアを殺した相手だからだろうか。罪悪感はまるでなかった。 機会。そうだ、チャンスなのだ。胸をかきむしるほどに願い、腕を伸ばしても届かなかった、変えたい過去を変えるチャンス。 統夜が、こちらをもう振り返らないなら、振り返る世界を作ればいいのではないか? どうせ、死んだらもう自分に次はないのだ。 弱った人なら殺す。強い人は取り入って隙を見て殺す。襲ってくるなら力を見て逃げるか、倒すか決めればいい。 幸い、このベルゲルミルは、とても強力なロボットだ。黒い想いが自分を満たす。 「見てて、統夜……必ず勝って見せるから」 【メルア=メルナ=メイア 搭乗機体:ジム・カスタム(機動戦士ガンダム0083 ) パイロット状況:死亡 機体状況:バラバラ】 【グ=ランゾン・ゴーツ 搭乗機体:ラフトクランズ(バンプレストオリジナル) パイロット状況:死亡 機体状況:下半身消滅、コクピットブロック破壊】 【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(バンプレストオリジナル) パイロット状況:ステルスマーダー化 機体状況:良好 現在位置:C-8 第1行動方針:参加者の殺害 最終行動方針:優勝】 【流 竜馬 搭乗機体:大雷凰(バンプレストオリジナル) パイロット状態:良好 機体状態:良好 現在位置:C- 8 第一行動方針:サーチアンドデストロイ 最終行動方針:ゲームで勝つ】 【残り52名】 【12時50分】 本編22話 憎悪
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/297.html
思いこみ、勘違い、嘘、そして…… ◆JF9sfJq3GE この世界の中では一・二を争うほど広大な森林地帯――実に南北に約130km、東西に約100kmにも及ぶ豊かな原生林の南東の端に、白亜の戦艦が静かに鎮座していた。 一組の男女が焚き火をかこっていた。その明りを受けて少女の影が暖色に染まった戦艦の外壁にまで伸びていた。 そこからタラップを伝って一人の少年が姿を現し、二人を見つけると声をかける。 振り返った二人の口にはスプーンがくわえられていた。 「人を働かせておいて呑気に食事ですか……」 口調に若干の刺がにじみ出る。それに気づいてか、はたまた気づかずか、二人は「ごめんごめん」とあまり悪びれもせずに軽く返した。 「周囲の警戒は?」 「トモロがしてくれています。それにしても……」 質問に軽く答えを返した少年が、席に座りつつ視線を流す。 「二人でどれだけ食べる気ですか……」 ため息がこぼれた。 キラの視線の先にはレトルト用品のパッケージやら、空になった缶詰やら、二人が食べ散らかした残骸の山が大量にあった。 しかも、その細い体で隠すように座っているが、赤毛の少女の山のほうが大きい。 これにはさすがの二人も苦笑いで返すほかなかった。 テニアが器によそってくれた母さんのシチューを受け取りながら、キラは本題に入る。 「簡単なものですけれど解析結果が出ましたよ」 その一言でムサシの表情が強ばり「どうだった?」と先を促す。テニアは大して興味もないのか、自分の器に新たなシチューをよそっていた。 その様子を若干呆れた感じで眺めながらキラは言葉を続ける。 「テニアの言ったとおり核みたいですね」 その重く苦しい響きにムサシは顔を伏せた。 しばらくの沈黙の後、「そうか……」と小さくつぶやく。 「それでですね。あれは僕のほうで預からせてもらっていいですか?」 その申し出を耳にしたとき、不覚にもムサシの顔には安堵の色が浮かんだ。 核を持ち歩き始めたときから感じ始めた麻痺するような緊張感、重くのしかかった重圧感、そういったものから解き放たれるかもしれない。そういう感じの色だ。 だが、すぐにその表情も色を潜める。 ムサシの瞳に大人しそうな少年がうつっている。 まだ幼さを残す年頃、一見すると華奢と言ってもいいほどの細い体、こんな少年にこれだけの重荷を背負わせていいのだろうか……。 「剥き出しのまま持ち歩くのよりは、戦艦の中で安置させておいたほうが安全。そう思いませんか?」 その言葉に反論の余地はない。常識的に考えるとそうなのだ。そんなことは頭の鈍いムサシにでもわかっていた。 だからといって理屈だけで割り切れるものでもない。 「それに……、あれは決して爆発させちゃいけないものです……」 重なる言葉を受けて、ムサシの鼓動がひときわ大きく鳴る。 しばらく沈痛な面持ちで考えた後、絞り出すような声でただ「すまない」とだけ言った。それが了承の言葉であった。 闇色に染まった森林の中、焚火の明かりだけが灯っている。 闇に脅える人に安堵と安らぎを与えてくれるはずのそれが、何故かこのときはひどくまがまがしいものに見えた。 寡黙な空気がその場を支配する。さっきまでは呑気にシチューをがっついていたテニアでさえも押し黙っている。 カチャカチャと食器とスプーンが奏でる音、ただそれだけの音が、このときはひどく大きな音に聞こえていた。 『北北西からこちらに接近してくる機体がある。機数は1。かなりの高高度だ』 突然、トモロの声が静寂を破った。 それを合図に、全員が蜘蛛の子を散らしたように機体に駆け込む。 やがて、起動兵器の駆動音が周囲の空気をかき乱し始めた。 『訂正、機数2。もう一機は地上だ。空の機体の後ろをついてきている』 その頃になって、トモロは訂正を伝える。 「トモロ、通信は? 」 『まだ圏外だ』 「空のほうは僕が接触してみます。ムサシさんは地上のほうをお願いします。テニアは念のために後ろに下がってバックアップ、万が一戦闘になった場合は離脱を手伝って」 「了解」 「まかせろ。キラ、発砲は」 「わかっています。ギリギリまで通信を続け、こちらから先に攻撃は仕掛けません。トモロ、反応弾の搬入は?」 『終わっている』 トモロの返答を聞いたとき、キラは何かが重く覆いかぶさっているかのような感覚を覚えた。 これから行う接触に対する緊張感ではない。反応弾の影響だろう。 解析結果の数値をみてもその破壊力はピンとこなかったが、嫌なものを運んでいるという生理的嫌悪を間違いなく感じていた。 そしてそれ以上に、『核』という言葉がもたらす根源的恐怖感がのしかかっていた。 (大丈夫。きっとうまくいく。戦闘になんてならずにすむんだ) 自分に言い聞かせていたとき、ムサシが口を開いた。 「キラ、実はな……」 見るとムサシはガンダムの足の裏で焚き火を踏み消しつつ通信を行っている。 「実はおいら、その核を使おうと思ってた」 驚いたキラの瞳が大きく開く。 「無敵戦艦ダイのことは話したよな? 」 「ええ、合流したときに……」 無敵戦艦ダイ――恐竜帝国最強のメカザウルスにして、ムサシが命を賭した相手。その装甲とバリアは恐ろしい厚さを誇り、ゲッターの攻撃は何一つ通じなかった相手でもある。 それがこの世界にも存在し、その打倒のために彼が仲間を集めていることは、すでに聞いていた。 それを語ったときのムサシの声の苦渋の響きは、それがどれだけ許されない存在なのかを物語っていたように思えた。 「おいら、反応弾を手に入れたときにちょっと思ったんだ……。これでダイを落とせるって……」 ムサシの独白は続く。 「でも、本当はそんなこと考えたらいけなかったんだよな。キラ、お前の言うとおりあれは使っちゃいけないものなんだよな……。 だからきっと、あれはおいらが持つものじゃなかったんだ……」 何かを考えさせられるそんな言葉だった。 「なあ……」 モニターに映されたムサシの顔が優しく笑う。 「おいらとキラにテニア……それにトモロ、まだ会ったことない統夜、これだけ集まれば奴に勝てるかな?」 リョウや隼人がいなくても……と付け足そうとしてやめ、ムサシはそこで言葉を区切った。 「ええ、きっと……必ず」 どこかの通信を傍受したのか突如耳元に耳障りなノイズと人の声が流れる。 レーダーに反応はない。 何の影響か知らないが、この世界では通信可能距離がレーダーの有効範囲よりも長いこともあれば逆もある。 場所によってその有効距離さえもバラバラ。まるででたらめだった。 耳を澄ます要領で意識を凝らし、感度を上げていく。 ……男が3に女が1か。 ノイズに紛れて届いてくる声の数から人数が割り出せた。 だが、話の内容に関しては断片的にいくつかの単語が届くだけでつかめない。 情報を拾い上げようとさらに注意を傾けつつ、迂回路を頭の中に思い描く。 できることなら交戦は避けたかった。 『無……艦ダイの…とは話し……な? 』 『ダイ』という単語が耳に飛び込んできた。 無敵戦艦ダイ――この世界におけるユリカの乗機であり、このわずか数ブロック先で自分の帰りを待っているはずの戦艦である。 なんだ? なんの話をしている? こいつらはユリカとどんな関係か? ユリカの身にあったのか? 一体こいつらは何を知っているのか? 焦る気持ちを抑えつつ、流れてくる言葉に耳を澄ます。ノイズ音に邪魔をされてところどころしか音声を拾えない。 それがすごくもどかしかった。 『おいら、反応弾…手に入れ……きに…………思った…だ……。こ………ダイ…落とせ…って……』 野太い男の声が看過出来ない内容をアキトに告げる。 一瞬、何を言っているのかわからなかった。いや、頭では理解できたが、意味が届くまでに時間がかかった。 その言葉は告げている。 ユリカを殺すと―― それもよりにもよって、核で滅ぼすと―― 聞くに堪えられなくなり、傍受していた通信を切る。 いつの間にかいたのか、汗が玉になって肌に浮いていた。 見過ごせるはずがない。そう、この事態をこの男に見過ごせるはずがなかった。 自然と機体の足が速くなる。 どんどんと速力を上げていき、周囲の景色が流れるように後方に遠ざかる。 雲海の中に分け入り高度を徐々に下げていく。 雲を抜けたアキトの視界に、ナデシコに比べれば幾分小型な、しかし巨大な戦艦が飛び込んできた。 思わず目を疑った。 だって、あれは―― 「あれは……カティア? 」 ムサシの呟きが通信機越しに聞こえてきた。 そう。あれはカティアの機体だった。ここで再会したときの戦闘機。 でも……でも、そんなはずはない。 だってカティアは―― ――アタシが殺したんだ―― 不意にテニアは痛みに似たものに襲われて、顔をしかめた。 笑顔のままのカティアの死に顔がゆっくりと浮かび上がり、 『統夜はあなたのものにはならないわ』 囁きを一つ残して消えた。 (考えすぎるな……あれはカティアじゃない) 自分に言い聞かせる。 あれは―― ――カティアの機体を奪った誰かだ―― 嫌な考えを振り払い、上空を睨みつける。 同時に上空の機体がぶれたかと思うと重い衝撃が機体に走り、吹っ飛ばされ、背後の巨木に叩きつけられた。振動が伝わり、周囲の木々がざわめく。 攻撃された? 誰に? ……カティアだ。 やっぱりあれはカティアなんだ……。 途端に目に脅えの色が浮かび、顔は青ざめる。 振り払ったはずの考えが頭をよぎり、満たした。 カティアだ。 カティアがアタシを殺しに来た。 だったら―― 巨木にすがりつくようにして立ち上がる。 カタカタと震えながらマシンナリーライフルの銃口が上空に向けられる。 ――だったら何度でもアタシが殺してあげる―― 瞳に狂気が宿り、震えが止まる。発砲音があたりに響きわたった。 一度状況を確認する。 ムサシは接近しつつあるもう一機の警戒にあたり、テニアは伏せ手としてレーダー外の森林に隠れている。 周囲に他に機影はない。相手から見たら、こちらは単艦で姿をさらしているように見えるだろう。 モニターに目を向ける。 夜の闇を保護色にした一基の戦闘機がそこには映し出されていた。幾度かの戦闘をくぐりぬけてきたのか、見ただけで各部の損傷が激しいのがわかった。 一度大きく息を吸い込んで呼吸を整えるとキラはコンソールに向かい合う。 「トモロ、通信を繋げて」 『わかった』 モニターに大仰なヘルメットをかぶった男が映し出され、二人の目が合う。 「こちらはキラ・ヤマト。交戦の意思はありません」 「こちらはテンカワ・アキト。聞き」 そこで唐突に言葉は途切れ、男の視線が動く。モニターの先の戦闘機が大きくループを描いた。 (回避運動? どうして? ) 『銃弾だ。角度からしておそらくテニアだな』 キラの思考を読んだかのようにトモロが補足を付け足す。 「テニア! どうして撃ったんだ!! 」 思わず通信を切り替え、声を荒げて叫ぶ。だが通信が不調なのか、それとも何かあったのか、ノイズが流れてくるばかりで繋がらなかった。 「それがそちらのやり口か……」 男の冷たい声が響く。 「待ってください! せめて話だけでも!! 」 「……」 戦闘機が戦艦の脇をすり抜けていく。 その直後、戦艦はゆれ、キラは固く握りしめた拳をコンソールに叩きつけた。 すれ違いざまに放ったミサイルの群れ。それは巨大な的にまっすぐ迫っていき、見えない何かに阻まれて爆発を起こした。 (ディストーションフィールドか? いや……実弾の無力化……、ピンポイントバリアか、もしくは同等の特性を持った知らない技術だな……) 『僕たちは戦うつもりはない。話を聞いてください』 未だ通信機の向こうでこの戦艦の主は叫んでいる。「手違いだ」という言葉も飛んでくる。 アキトは一笑にふした。 巨大な戦艦に注意をひきつけ、交戦の意思はないと油断させる。そうやってできた隙を狙い狙撃してきた。 明らかに計画的なおこないだ。それを手違いなどとは、信じられるはずがなかった。 『ノイ=レジセイア、僕は奴の存在が許せない!だから僕は奴の言いなりにはならない』 少年が独白を始める。それに何も返さず、攻撃の手も緩めない。 『この殺し合いに異を唱える人達を集めてノイ=レジセイアを倒す。そう決めたんです』 その言葉には、あの二人のネゴシエイターのように、どこか真に迫った力強い響きが込められていた。 だから何だと言うのだ。そのネゴシエイターの片割れリリーナ=ピースクラフトでさえ死んだ。 なるほど、この少年の主張は彼らに比べれば、すべての参加者の説得を謳わないだけ幾分現実を見ているように思える。 主催者の打倒に心が動かないでもない。 しかし、少年の主張は無意味だった。 アキトにとって最大にして唯一の重要事項、それはユリカを無事に守り抜くことができるか否か、それだけに絞られる。 そして、その視点から見たときこの少年は―― 『僕の意見に賛同してくれなくてもいい。せめて他の参加者の脅威となる無敵戦艦ダイ、それを倒すのを手伝ってくれませんか? 』 ――滅ぼさなくてはならない敵だ。 少年の言葉が神経を逆なでする。 YF‐21は空高く飛翔するとJアークの直上から再び攻撃に移った。 ガンポッドの発射管が火を噴く、ミサイルが白い航跡を残して伸びていく、それらはバリアのただ一点に着弾し、穴を穿ち、数発が抜けていった。 轟音と共に激しい震動がJアークを襲い、キラは転んだ。 「トモロ、損傷は? 」 急いで身を起しながら口早に言う。 『軽微だ。だがしかし、まずいな……』 「まずい? 」 『相手は火力を一点に集中してジェネレイティングアーマーを抜いてきている。だが、いくら抜かれようとあの程度の火力ではそう大きな損傷は与えられるものではない』 このまま説得を続けても特に問題はないように思えた。だが『しかし――』とトモロは続ける。 『反応弾付近に被弾した時だけは話は別だ……』 キラの表情が凍りつく。 万が一あれに誘爆したらJアーク一隻が沈んで済むような話ではない。6基の反応弾からなる連鎖爆発――それはおそらく一ブロックを壊滅させるに足る威力だろう。 『どうする? 』 ここまで説得に応じない相手、万が一の場合の被害、それが頭の中をめぐり 「しかたありません。あの機体を撃墜します」 キラは判断を下した。 パチパチパチ―― 突如、拍手が聞こえてきた。 何か嫌な予感がして体中から汗が噴き出てくる。 「クク……、いいねぇ。なかなかの役者ぶりだ」 凍りついたように体が動かなかった。 「最初にお嬢ちゃんたちの会話を傍受した時に俺は思ったよ。こいつはよくない」 そんな状態を知ってか知らずか、声の主は流暢に語り始める。 「何しろお前さんたちときたら、話し合いで済まそうとしている。人生は楽しまないと損だぜ? そこで面白おかしく騒ぎを大きくするために、俺は考えたのさ」 背後から何かが忍び寄ってくる――そういう気配を濃厚に感じた。 「で、お前さんを見たときピンときた。何に脅えてるか知らないが、こいつは使えるってな。あとはちょいと恐怖心を煽ってやった結果がこれさ――」 背後からぬぅっと伸びてきた手が巻きつき、コックピットにナイフが突きつけられる。 「いい役者ぶりだったが、出番が終わればひっこむのが役者だ。分るか、お嬢ちゃん? 」 覚悟を決め、一つ大きく深呼吸をおこなう。 「ええ……」 「そろそろ新しい役者の出番だ……。死にな」 男のセリフと同時にナイフが動く。 金属音が鳴り響き――男のナイフが弾かれた。 その隙に転げるように前に飛び込んで腕をくぐりぬける。 そして反転、後ろに跳び退きながら銃を構えた。 「残念、退場するのはあんただよ! 」 引き金に指がかかる。 合わせた照準の向こうで、黒い機体が突き出した左手がまっすぐ急速に伸びてくるのが見えた。 「えっ? 」 コックピットを大きな衝撃が襲い、背後の木々をなぎ倒しながら弾き飛ばされたベルゲルミルは、大地に爪痕を残して倒れた。 「テニア! テニア! 返事をしろ!! 」 声を荒げ呼びかけるが返答はなかった。 これはおいらのミスだ。 上空にカティアの機体が姿を現したとき、おいらはそれに気を取られた。 そして、おいらが相手しなければならないはずの機体を見失った。 慌てて苦手なレーダーをいじくりまわし、やっと見つけたと思ったときにはすでにテニアはつかまっていた。 ナイフをバルカンで弾き飛ばすのには成功したが、テニアは助けられなかった。 だからこいつはおいらが倒さなきゃならねぇ相手だ。 「クク……、ようやくお仲間のご登場か」 目の前に悠然と立ちはだかる黒いガンダムを睨みつける。 「どうした? かかってこいよ。そこに転がっているお仲間を助けたいんだろ? 」 これは挑発だ。わかっていたが、それを受け流せるはずもなくムサシは手にしたハンマーを振るった。 巨大な鉄の塊が唸りをあげて迫ってくる。それをわずかに踏み込んだだけでかわしたガウルンは、一気にムサシに肉薄すると投げ飛ばした。 「おいおい。まさかこれで終わりじゃないだろうな? 」 ガウルンが軽く挑発する。 起き上ったムサシはハンマーを手放し、ビームサーベルを引き抜いた。 再び両者の間合いが縮まり交錯する。 袈裟斬りに振るい下した粒子の刃を腕の部分を受け止めると、ガウルンはそのまま当て身を喰らわせる。 弾き飛ばされながらもガンダムのバルカンが火を噴き、弾薬がマスターガンダムに襲いかかる。 それをマスターガンダムはマント型のシールドを展開させて防ぎ、そしてそのまま強引に距離を詰め、十分に縮まったところで再びマントを大きく広げた。 ムサシの眼の端に紫に輝く腕が見え、とっさに盾を構える。 「ダアァァクネスフィンガアアァァァァ!!!」 ズンッと思い振動が伝わり、防ぐ盾を鮮やかなオレンジ色に染めあげる。マスターガンダムの指がズブズブと盾に沈み込んでいく。 その盾が完全に融解し盾ではなくなるその寸前、ムサシは盾とサーベルを捨てた。そして空いた両腕はそのまま伸び、 「へへ、捕まえたぜ」 マスターガンダムの両肩を捕まえた。ムサシの口がにやりと笑う。 マスターガンダムが大きく揺れ、ガンダムを中心に大きな円を描く。それは徐々に遠心力で加速をつけていき、小さな竜巻をその場に巻き起こした。 「大!雪!山!おろしいいぃぃぃっ!!」 錐揉み状態で上空に巻き上げられ、マスターガンダムの装甲が悲鳴を上げる。強烈なGにガウルンの意識がブラックアウトしかかる。 その意識の隅で真っ直ぐに迫ってくるハンマーを見た。 (ハッ! いい攻撃だ……だが! ) ムサシは目を疑った。 大雪山おろしで上空に投げ飛ばし、錐揉み状態にあった黒いガンダム。それにハンマーを投げつけたのだ。普通ならば回避はおろか防御すらできないはずだった。 だが、今目の前のハンマーにはヒビが走り、そして崩れた。紫の布状のものが伸びてくる。 直後、重い衝撃が奔り、機体が悲鳴をあげ、深い森林の中へ埋没した。 「思ったよりも手こずっちまったな」 機体の各部の損傷のチェックを終えたガウルンは、わずかばかり離れた空を見上げた。そこではまだ激戦が繰り広げられている。 「おうおう、派手にやってるねぇ」 にいっと笑みが零れおちる。 最初からベルゲルミルにもガンダムにも興味は薄かった。彼が今回最も興味を抱いた相手はJアークだった。 航空力学を頭から否定したフォルムで中に浮かぶ戦艦――彼の住む世界では常識はずれのその存在に興味を持たずして、いったい何に興味を持つというのだろう。 ひときわ大きい爆発が起こるのが見えた。 「まだ間に合うな。そいじゃ、ちょっと混ぜてもらいに行ってきますか……」 どこかそこらに散歩にでも行くような、そんなかんじで再び男は戦場に身を投じた。 なんて……、なんてざまだ……。 なにがテニアと統夜を会わせてみせる……だ。 なにがこの娘を死なせるわけにはいかない……だ。 「おいらはテニアを守ることも……敵を倒すこともできないじゃないか……」 ガウルンが飛び去ったあと、ムサシは倒れたベルゲルミルの横で立ち尽くしていた。 視線の先には降り注ぐ弾薬の雨と一人奮戦を続けるJアークの姿があった。 何故だ! 何故こんなにも この機体は脆い! 何故こんなにも この機体はとろい! 何故こんなにも おいらは弱い! 情けなかった。ただ自分が情けなかった。 この機体がもっと頑丈なら、銃弾の降り注ぐあの中にも飛び込んでいけた。 おいらがもっと射撃がうまければ、ここからでも援護することができた。 リョウや隼人ならきっとこんなことはなかったはずだ。 テニアを統夜に会わせるまで守るって決めたのに、現実の自分は無力だった。 「クソォッ!!!!!!」 拳を固く握りしめ振り上げる。 しかし、その拳を振りおろす先は存在しなかった。 数本、いや数十本の閃光が地と空ただ二つの機体に殺到する。 それを巧みにかわしながらジリジリと距離を詰めていたガウルンは、しかし徐々に疎から密になっていく閃光の群れに阻まれ、一旦接近をあきらめた。 地上に着地するや否や大地を蹴ってその場を飛び退く。爆音が響き、地面が抉られる。 それを小火器が追いやり、ミサイルが追尾し、爆雷が吹き飛ばす。 それを身をひねってかわし、遮蔽物を利用して火線を防ぎ、飛び退く。 「おいおい。周囲の地形が軽く変わるほど撃ち込んどいてまだ撃ちたりねぇのか」 一向にやむ気配のない銃声、集中豪雨のように降り注ぐ弾丸、圧倒的な火力を前に思わず愚痴がこぼれた。 距離を置いているときはまだいい。いくらかの余裕をもってかわすことができた。 しかし、距離を詰めるに従って火線は密になり、回避スペースを奪う。そこを抜ければあいての射角は極端に制限される懐に、入り込めるはずだった。 だが、先ほどから一定ラインを超えらない。全ての火器が完全に統制され、接近を阻んでいた。 (一人で攻城戦を仕掛けているようなものだな……いや、二人か……) ちらりと空に目をやる。眼の端で、弾幕に遮られあえなく距離をとる姿が見えた。 (空も似たような状態か……) いずれにせよマスターガンダムでは接近しなければ埒があかない。 紫に輝く光跡を残しながらガウルンは再び突撃を仕掛けた。 「キラ! このままではじり貧だぞ」 「わかってる」 二機の回避力はすさまじく弾薬は徐々に減っていっている。 かといって温存は不可能。この巨大な艦体を守るためにも、ムサシとテニアを守るために敵を引きつけておくためにも、どうしても相応の弾幕は必要であった。 さらに付け加えるなら、キラのパイロットとしての特性が、戦艦という機体と一致していなかったことも一役買っているのかもしれない。 ともかく、二機を沈黙させねば撤退も難しい状況である。 (どっちからだ?) 思考を練る。 Jアークの退避を優先するならば空だ。地上の黒いガンダムの空戦能力はJアークに比べれば極端に低い。ならば戦闘機をどうにかすれば撤退は容易になる。 だが、仲間の安全を優先するならば地上だった。広い森林地帯に紛れこみ身を隠せば、空からの発見は容易ではない。黒いガンダムをおとせばひとまず味方の安全は得られるであろう。 「トモロ、艦下部の火器を一割温存させて」 「それでは突破されてしまうが…… 」 「いいんだ。温存した火器の発射のタイミングは僕がとる。 トモロは空中の機体の牽制を続けて」 「わかった」 続けて必要な指示をすべて飛ばしたあとモニターに向きなおる。 このあと黒いガンダムに起こるであろう隙、それを逃すわけにはいかなかった。 黒い機体が緻密に動き、巨大な戦艦との距離を詰めていく。 周囲に溢れる光の帯を装甲の表面をかすらせる程度でかわしていく。 その動きは一切の無駄がなく、滑らかで、一つの芸術品ともとれるほど巧みだった。 やがて最後の弾幕をかわしたガウルンの視界は、大きく拓けた。 「ひゃぁぁぁっはぁぁぁ!ダァァアクネス!」 口の端がつりあがり下卑た笑みが知らずと零れおちる。 後はがら空きの横腹に穴を開けて内部から破壊するだけだった。 紫に発光した右手を携え、急速に速力をあげたガウルンはJアークに突撃し―― 「フィン」 ――何か見えない壁に機体がぶつかり、弾かれた。 「トモロ、今だ! 」 キラは待っていた。弾幕を抜けたガンダムがジェネレイティングアーマーにぶつかり、機体そのものが弾かれる瞬間を。 合図と同時に温存していた火器が一斉に火を噴く。 「クソッ!今のは何だ? 」 不意に何かに衝突し、体勢を崩した。 (あ~あ、せっかくここまで苦労して詰めた距離がパアだ……) 弾かれた機体が下降に転じ、ゆっくりと艦体が遠のいていく。そのとき、視界が唸りをあげて飛来する無数の火器群を捉えた。 (なるほど。喰えねぇ奴だ) 何が可笑しいのか笑いが込み上げてくる。 (だが、この程度ならかわせるなぁ) 飛来する火器群が殺到するまでにかかる時間的ロス、ほんの数秒にも満たない時間だったが、ガウルンにとってそれは十分な時間であった。 慌てず、冷静に機体を立て直そうとしたその瞬間、装甲が悲鳴をあげ、機体が軋んだ。 その突然の爆発に困惑する。眼に映る火器群が起こしたものではなかった。 それはESミサイル――発射されると空間を超越して目標の至近に出現する空間転移型のミサイルが起こしたものであった。 だが、ジェネレイティングアーマーもESミサイルも彼のいた世界には存在しなければ、それに対する知識も当然持ち合わせていない。 ゆえに、何が起こったのか想像に難しく、予測がつかない事態でもあった。 「ハハハ! やるじゃぁないか…… 」 機体を立て直す時間はすでになくなっていた。 無数の弾薬が体勢を崩したガンダムを飲み込むのを確認して、キラは次の指示を飛ばした。 「ジェイクオース、射出! 」 依然として弱まることを知らない弾幕をかわしながら、アキトは敵艦の下方で爆発がおこるのを確認した。 「……落とされたのか? 」 しかし、それに気を取られたのも一瞬、すぐに敵艦の異常に気づく。 艦首から巨大な錨のような物体が撃ち出される。それは見る間に炎を纏っていき、さながら火の鳥のごとき形状へと変化してアキトに襲いかかった。 「艦載機か? ……なっ! 早い!! 」 変幻自在な軌道を描きなら迫る火の鳥をバレルロールでかわすと、即座にスプリットS(縦方向にUターンするマニューバ)で背後をとる。 Jアークからの弾幕がかすって右翼がわずかに火花を散らした。 「……消えろ」 ガトリングガンポッドの射線がジェイクオースを捉え、撒き散らされた弾丸が迫る。 だが次の瞬間、取り巻く炎に弾かれた。 「チッ! 」 舌打ち一つする間に相手は再びこちらに機体をぶつけようと、不規則にその動きを変えてくる。 対して、常に相手の背後をキープしようと、アキトも歪な航跡を残しながら空を舞う。 上、下、前、後、左、右、二機の位置が目まぐるしく入れ替わる。残された航跡が幾度も交わる。 旋回時の強烈なGに引っ張られ、皮が肉から剥がれてしまうような錯覚をアキトは覚えた。 後ろをとり、射線を確保する。引き金に指かけた瞬間、敵機が強引に軌道を変えた。 7時上方70°……来るか! 上方から敵機がねじり込むように航路に侵入してくる。 二機の間は急速に縮まり、炎が近づく。 その炎の濃淡がはっきりと見て取れ、機体が受ける熱に悲鳴を挙げ始めたとき、アキトは機体の状態を切り替えた。 機体の各部が動き、ファイターから手足のないバトロイドに姿を変える。一気に増した空気抵抗によって速力は削がれ、急速に二者の間隔が広がっていく。 体当たりを主武装とする高起動型ブラックサレナ――それを愛機とするアキトにとって、不規則に変化する軌道は読めなくとも、衝突の瞬間を読むことは可能だった。 視界に無防備な火の鳥がうつる。その隙を逃さずに打ち放たれるビームガン。それが次々とジェイクオースに着弾する。 ……5、6、7、8発目が炎の壁に穴を穿ち、その後続が炎の下の本体にダメージを与える。火の鳥が大きくぶれ、よろめきながら艦首に戻って行った。 そして、再開されるのは牽制の弾幕。息のつく暇もない。 ……徐々に威力が落ちてきていた? 細かいことはわからないが、あの兵器は蓄えたエネルギーを放出しながら進む類のものらしい。そして、取り巻く炎は時間の経過とともにその力を低下させる。 低下した結果、最初は抜けなかったあの炎を抜くことができた。そういうことだろう。 だが一度本体に戻った以上、またエネルギーを補充して出てくる。そう見るのが妥当だった。 その速力を考えると、離脱すら困難な状況に置かれたと思えなくもなかった。 「よう、生きてるかい? 戦況は芳しくないようだな 」 通信が一つ入る。地上で戦っていたあの黒い機体からだった。 「まだ生きていたのか……」 「御挨拶だねぇ。危なかったが、まっ、見ての通りだ」 「……用がないならきるぞ」 「おいおい、話はここからだ。俺はもう一度仕掛ける。しばらく注意を惹きつけておいてくれねぇか?」 奇妙な違和感を覚えた。敵はすでにこの黒い機体を撃墜したと思い込んでいる。わざわざ通信を繋いで伝える必要はないのだ。 「それだけか? 」 「もうひとつ。俺が落とされたら、『愛してるぜ、カシム』って伝えてくれ」 「……なんだ、それは? 」 「なんだって……遺言さぁ。お前にはないのか? 一つ二つ言い残しておくことがよぉ。 言ってみな。お前が落とされた場合、俺が伝えてやるよ」 取り残されるユリカの姿が頭をよぎり、心臓が高鳴る。 しばしの沈黙の後、アキトの重い口は開いた。 「ミスマル・ユリカという女がこの先に……D-7にいると思う。彼女を……守ってやってくれないか……」 言ったあとで、言いようのない不安がアキトを支配する。 「ユリカ……ユリカちゃんか……クク」 通信機の向こうで相手がにやりと笑った気がした。 「知っているのか? 」 何か取り返しのつかないことを言ってしまった、そういう予感が頭をよぎる。 「ああ、知ってる。死んだよ……彼女。俺が殺した……」 肌がふつふつと泡立つ。 「なん……だと……」 全身の毛が怖気立つ。 「一人、見捨てられた彼女を追い詰め、弄り殺してやった。かわいそうになぁ……」 血液が逆流する。 「最後には二目と見れない顔になってしまって。あ~あ、かわいそう、ユリカちゃん」 嘘だ……。 頭が言葉を否定する。 「彼女の最後の言葉を教えてやろうか?『ごめんなさい』だとよ。健気だねぇ。 これは誰に向けた言葉なのかな?クク……ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」 さして見えぬ目の瞳孔がいっぱいに広がる。もはや巨大な戦艦は、アキトの視界には入らない。機体のシステムに支えられた視界は、地表の黒い機体だけを映していた。 生かしておけない。 そう思った。 噛みしめた歯ギリッと音を立てる。 「憎いか? 俺が憎いか? そうだ俺を憎め! さあ! さあ!! さあ!!! 」 こいつだけは生かしておけない。 そう思った。 そう―― ――例え何を犠牲にしようとも―― 「きさまあああぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!! 」 絶叫と共に引き金を引き絞られた。 放たれたのは最悪の兵器――反応弾だった。 放たれた反応弾が、ガウルンにかわされ地表に着弾するまでのほんの数秒、その数秒の間に―― ――アキトは一縷の望みを託してリミッターを解除して飛び去り―― ――キラはJアークをムサシ・テニアの盾にするように叫び―― ――トモロはジェイダーをオミットした後、その指示に従った―― そして、全ては光に飲み込まれる。全員の耳に響いたのは、ガウルンの満足気な笑い声だった。 パッと灯った光が急速に大きくなり、闇夜に太陽を出現させた。 あれは何か――と考える暇もなく木々が一斉に燃え、炎が走るのが見えた。炎一色に染まった視界の隅に、倒れているベルゲルミルがうつる。 とっさにムサシがテニアを抱え込むようにして盾になったのと、全てのものを打ち砕く衝撃波が二人を飲み込んだのは、同時の出来事だった。 【キラ・ヤマト 搭乗機体:ジェイダー(勇者王ガオガイガー) パイロット状態:気絶 機体状態:機体全体に中程度の損傷(補給修復開始) 現在位置:C-6 第一行動方針:ジョナサンを待つ 第二行動方針:テニアがもしもゲームに乗っていた場合、彼女への処遇 第三行動方針:このゲームに乗っていない人たちを集める 最終行動方針:ノイ=レジセイアの撃破、そして脱出 備考:Jアークは補給ポイントでの補給不可、毎時当たり若干回復】 【テンカワ・アキト 登場機体:YF-21(マクロスプラス) パイロット状態:死亡 機体状態:消滅】 【ガウルン 搭乗機体:マスターガンダム(機動武闘伝Gガンダム) パイロット状況:死亡 機体状況:消滅 】 RX78-2ガンダムの瓦礫の中、ムサシが目を覚ます。 まどろみの中、テニアの声を聞いた気がした。 ぼやけた頭で考える、自分はテニアを守れたのか――と。 眼はもう見えなかった。だが、周囲で誰かが身じろぐ気配を感じた。 「テ……ニア?」 名前を呼んでみる。予想以上に口を動かすのが辛かった。 返事の代わりに抱きかかえられる。 あったかくて、柔らかかった。 「無……だった……だ」 「あんた、馬鹿だよ……」 テニアの声が降ってくる。 「あたしなんか……かばってさ」 表情はもう見えない。声色もよくわからない。 それでもムサシにはテニアが無事だとわかった、それだけで充分だった。 心意気ばかり大きくて無力だった。誰の力にもなれなかった。 それでもテニアを守ることができた。 この世界でただ一つ自分がなしえたことだった。 胸のあたりが熱くなる。体の感覚は徐々になくなっていったがそこだけはいつまでも熱かった。 み……ろよ……………お……い…らだっ………て役……………に……………………… 瓦礫の中、赤毛の少女が一人の男を抱いてた。その少女が握っている破片は男の胸に深々と突き刺さっている。 「あ~あ、一からやりなおしか……」 少女は男の反応がなくなると破片を引き抜き、そこらに投げ捨てながら呟く。 「あんたは役に立ったから、首を落とすのだけは勘弁してあげるね」 一度、背後を振り返るとムサシの死骸に向かって微笑む。そして、汚れを気にしつつ少女は歩きだした。 「うわぁ、ベトベト。市街地まで行けばお湯くらいでるかな……シャワー、浴びたい」 【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル) パイロット状況:非常に不安定 機体状況:全体に中程度の損傷(修復中) マニピュレーターに血が微かについている・ガンポッドを装備 現在位置:C-6 第一行動方針:ムサシの代わりを探して騙す 第二行動方針:シャワー浴びたい 第三行動方針:参加者の殺害 最終行動方針:優勝 備考1:首輪を所持】 【巴武蔵 搭乗機体:RX-78ガンダム(機動戦士ガンダム) パイロット状態:死亡 機体状況:粉々】 【残り39人】 【初日 21 00】 本編106話 大いなる誤解 本編111話 とある竜の恋の歌